アメリカ遠征は「もの凄く悔しかった」 “レジェンド超え”も…親善試合に懸けた「人一倍強い」思い

代表通算10ゴール目を決めた小川航基【写真:徳原隆元】
代表通算10ゴール目を決めた小川航基【写真:徳原隆元】

パラグアイ戦で前半に同点弾を決めた小川航基は代表11戦10発

 サッカー日本代表(FIFAランク19位)は10月10日、キリンチャレンジカップ2025でパラグアイ代表(同37位)と対戦し、2-2のドローで終わった。この試合の前半に同点弾を決めたFW小川航基は、この試合に並々ならぬ思いで臨んでいた。

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 ネットを揺らすと右手で天を指差し、感情を露わにした。1点を追いかける日本は前半26分、左サイドからのクロスを跳ね返されたカウンターの場面、MF中村敬斗が体を張りボールを掻き出す。

「ボールがガチャガチャってなった時、スパッと縦に入った時はディフェンスも前に来づらい」と流れを読んでいた小川は、MF佐野海舟からのパスを前向きにコントロールすると、迷いなく右足を振り抜いた。

 無回転気味のシュートは相手GKにセーブされたように見えたが、弾ききれずにボールはゴールラインを割った。「名波さんから振れるタイミングで振るようにと、この代表活動で毎日言われ続けたのであの瞬間頭によぎった。あそこで振る判断をできたのは大きい」と振り返るように、トラップからシュートを放つまで1秒で決断している。

 所属するオランダ1部NECナイメヘンでも開幕から7戦3ゴール1アシストと好調を維持している小川。それでも先月、アメリカの地で悔しい思いを味わった。森保Jは9月シリーズ初戦のメキシコ代表戦(0-0)でコアメンバーを起用し、中2日で行われたアメリカ戦ではメンバー全員を変更。いわゆる”サブ組”で臨んだ。

 アメリカ戦で起用された小川はフル出場を果たすも、後半にバー直撃のミドルシュートを放った。だが、その他のプレーで見せ場を作れず、圧倒的な実力を見せつけるまでには至らなかった。

「あのアメリカ戦はもの凄く悔しくて。自分個人としてもそうですけど、選手を変えて挑んだ戦いのなかで負けてしまった、チームとして結果を残せなかったのがもの凄く悔しくて。チームが上手くいかないと個人としてもなかなか機能しないというのがやっぱりある」

 そんな悔しい思いから1か月、「またチャンスをもらえたので、今回に懸ける思いは本当に人一倍強いものがあった」と試合前の心境を明かし、試合序盤から積極的にプレス。アメリカ戦の反省を活かすようにロングボールや楔のパスに対して体を張った。

「複数得点したかったですけど、1得点取れたのは自信になると思います」

レジェンドの記録を抜いた

 小川はA代表通算で2桁となる10ゴール目を記録。出場11試合での達成は、8月に亡くなった釜本邦茂氏が1966年に打ち立てた12試合10ゴールの記録を59年ぶりに更新する結果となった。

「僕の世代からしたらプレーを見る機会はなかったですけど、『釜本さん』という名前は常々自分の耳に入ってくる。僕がジュビロに入団した時も、『釜本さんをお前は超えられる』と獲ってもらった。ただ釜本さんを超えたわけでも、得点数で上回ったわけでもなんでもない」

 結果こそ残しているが、小川は森保Jにおいて絶対的なストライカーの座を奪うまでには至っていない。ライバルである上田をエースと呼ぶ世間の声もあり、起用法を見ても小川は11試合のうちスタメン起用が約半分の6試合。対する上田が33試合中21試合がスタメン起用(15得点)となっている。

 それでも出場するたび、結果を残し着実に力を示してきた。11戦10発は「悪くない数字」と触れ、「自分は出場時間が短い。試合数はそれだけあるかもしれないけど、分数で言ったらそこまで重ねていないなかで、決定力は見せられているかなと思います」と、強みを発揮できていると語った。

 この試合では小川に代わって入った上田が、出場わずか5分で値千金の同点弾を決めた。「ここ数試合FWに問題があったと思います。そのなかでストライカー2人が点取れたのはチームとしても大きいし、より一層気が引き締まると言いますか、ここからポジション争いが激しくなっていくと思うので、負けないようにしたい」と、同リーグで得点ランクトップを独走するライバルへ火花を散らした。

 W杯では勝ち点0を1に、1を3に持っていくために、ここぞの1点が必要となる。そんな時、小川の決定力は日本にとって大きな武器になる。さらにこれまでの9ゴールはE1選手権やW杯予選とアジア相手に奪っていたが、南米から得点を奪えたことも価値が高い。

 W杯まで残りちょうど8か月。小川はこれまで何度も怪我に泣かされてきた。昨年もオランダで負傷し、9月シリーズが10か月ぶりの招集となった。若い時から将来を嘱望され、世代を牽引してきた大器。W杯のピッチに立つのが目前に迫っている。

(FOOTBALL ZONE編集部・小西優介 / Yusuke Konishi)



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