W杯1年前…日本代表が抱える“不確定要素”の難題 運命を左右する夏の分岐点

森保ジャパンで活躍する中心選手たちの去就に注目【写真:徳原隆元】
森保ジャパンで活躍する中心選手たちの去就に注目【写真:徳原隆元】

2026年6月にW杯を控える日本代表、気になる主力選手の移籍

 日本代表は2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア予選を通過し、ここから1年間は本大会への準備になる。そこで気になるのは主力選手の移籍だ。

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 2014年ブラジルW杯に向けて、本田圭佑が2013年12月にCSKAモスクワからACミランへ移籍し、香川真司は2012年にボルシア・ドルトムントからマンチェスター・ユナイテッドへ移籍。日本代表の両輪がビッグクラブに所属していたわけだが、どちらも出場機会を減らしていた。

 ミラン、マンUからオファーがあれば断る理由はない。選手として間違いなくステップアップである。ただ、日本代表を考えると移籍が必ずしもプラスになるとは限らないわけだ。

 オフに入る欧州ではこれから移籍市場が活発化する。欧州クラブ所属の日本代表選手にも動きがあるだろう。

 インドネシア戦でキャプテンマークを巻いた久保建英は24歳。これから数年間でキャリアのピークを迎える。毎年のようにレアル・ソシエダからの移籍が噂されているが、実現していないのは移籍金額の高さがネックになっているからだ。設定されている移籍金額は6000万ユーロ(約100億円)。中東のクラブはともかく、欧州ビッグクラブでも簡単に捻出できる額ではない。アトレティコ・マドリードが興味を持っているという報道もあった。アントワーヌ・グリーズマンの後継者として期待されているのだろう。

 三笘薫(ブライトン)にも様々な移籍の噂が出ている。リーグ・アン(フランス1部)からの降格が決まったスタッド・ランスの伊東純也、中村敬斗は移籍の可能性が高い。セルティックの前田大然、旗手怜央の動向も気になるところだ。

 より大きなクラブから良い条件でオファーがあれば、基本的に選手は移籍するものだ。それが本人にとって良いかどうかは移籍してみなければなんとも言えないが、ほとんどのケースで新たな挑戦を選択する。一方、日本代表にとって選手の移籍がプラスかマイナスかは分からないが、多くの選手が移籍することになればそれだけ不確定要素は増える。すべてが都合良く回ればいいが、そうならないと考えたほうがいいかもしれない。

W杯へ必要に応じた決断が不可欠…変化を躊躇すると手遅れの可能性も

 2014年W杯では、本田と香川の移籍など様々な影響もあり、プランの変更を余儀なくされた。本大会直前まで長らく招集していなかった大久保嘉人をW杯メンバーに加え、新たなオプションを模索している。しかし、大久保がフィットしたのは最後のコロンビア戦だった。1-4と大敗した試合なので印象は悪いけれども、本田、香川、岡崎慎司に大久保を加えた攻撃はアルベルト・ザッケローニ監督の日本代表でも最高の破壊力を示していた。ただ、大久保を加えるタイミングが遅すぎた。

 ここからの1年で移籍も含めて選手の状態は大きく変化する可能性がある。これまでの実績は重要だが、必要に応じて手を打たなければならないかもしれず、その際は過去にこだわらずに決断しなければならない。変化を躊躇すると手遅れになってしまうからだ。かなり難しい判断になる。

 そうでなくても2026年のW杯はチーム数(32→48)が増えてレギュレーションが変わり、これまで4試合(グループリーグ3試合とベスト16)しか戦ったことのない日本代表だが、5試合目(グループリーグ3試合→ラウンド32→ラウンド16)に勝たなければベスト8には入れない。優勝するなら8試合。まだどこも経験したことがない試合数である。代表スタッフにとって大変忙しい1年になりそうだ。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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