浦和内定190cm守護神、大宮に「負けるわけには」 長期離脱も…復帰前より成長の理由

筑波大学の佐藤瑠星「もう『気持ちいい』の一言ですね。しかも相手は大宮」
大学サッカー界きっての名門・筑波大学が2年連続でジャイアントキリングを達成した。天皇杯1回戦、J2リーグで2位のRB大宮アルディージャとの一戦に敵地・NACK5スタジアムに乗り込んだ筑波大は、立ち上がりから積極的なビルドアップからの攻撃と、組織的な守備で一進一退の攻防を繰り広げた。
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前半40分にはポゼッションからMF矢田龍之介が右サイドのDF布施克真に展開すると、布施のクロスをニアでMF廣井蘭人がヘッドで合わせて、大宮ゴールをこじ開ける。後半、大宮の猛攻も浦和内定のGK佐藤瑠星を中心とした守備陣が最後まで集中力を切らさず、1-0で試合をクロージング。昨年の2回戦ではJ1で好調を維持していた町田ゼルビアに延長戦を経て、PK戦の末に勝利して話題になったが、今年もJ2上位クラブを90分勝利で飾って再び話題の中心となった。
今回、このジャイアントキリングの裏側をピッチに立った選手の物語とともに紐解いていく。第1回目は昨年も町田の前に立ちはだかり、今年もビッグセーブ連発で、かつクリーンシートを達成したGK佐藤について。
まさに守護神という呼び名がふさわしい活躍だった。190センチのサイズに加え、屈強なフィジカル、そしてシュートストップやハイボール処理などのゴールキーピングの質の高さ。浦和内定の看板も頷けるハイレベルなGKである佐藤は、立ち上がりからビルドアップ面で落ち着いたプレーを見せた。
「相手がビルドアップを狙っているのは分かっていたので、そこでビビってしまうのではなく、プレスを掻い潜ろうと思いました」
GKも蹴り出さずにCBにつないで、ボールを動かしていく。いつボールが引っかかってもいいようにポジショニングには細心の注意を払い、ボールがきても正確なファーストタッチで味方につなげた。
1点をリードし、迎えた後半は相手がDF下口稚葉、FW杉本健勇、泉柊耶らレギュラークラスを次々と投入して波状攻撃を仕掛けてきたが、ここから佐藤はセービングとハイボール処理で魅せる。
後半11分に左からのクロスに勇気を持った飛び出しからパンチングで遠くに弾き出すと、同15分にはFWオリオラ・サンデーのドリブルシュートをドンピシャの読みで横っ飛びでスーパーセーブ。同30分にはファーに落ちてくるライナー性のクロスをバックステップから両手でガッチリジャンピングキャッチ。アディショナルタイムの枠内シュートも落ち着いて弾き出した。
「もう『気持ちいい』の一言ですね。しかも相手は大宮ということで、浦和内定の身としては『さいたまダービー』で負けるわけにはいかなかった。いい結果につながって嬉しいです」
今回の勝利は昨年とは違う点があると佐藤は言う。それは試合に臨むメンタリティーだった。
「去年J1クラブに勝ったことで、今年はJクラブとやっても物怖じしない雰囲気になっていました。相手のプレスを分析しながら、時間をかけて戦術トレーニングをしてきたので、今日は1人、1人がやるべきことをやって勝ちに行くメンタリティーで臨めました」
佐藤自身も期するものがあった。帯同した今年の浦和のキャンプで左手を負傷し、そこから長期離脱を強いられていた。この大宮戦は彼にとって復帰2戦目。復帰戦は関東大学サッカーリーグ1部・第8節の東京国際大学で、ここで筑波大は2失点をして今季リーグ初黒星を喫した。それだけに「どうしても勝ちたかった」と意気込んだ上で掴んだ結果だった。
「開幕からずっと出ていた入江倫平(3年)のプレーを見ていて刺激になりましたし、その分、リハビリで怪我前よりもいい状態で復帰しようと取り組んできました。意識したのは体幹と肩まわり、そして足首の強化です。徹底してやったことで、足首に関してはセービングの際に手前の(ボール方向の)足を固定してから、逆足を使って飛ぶという動作も安定してきたし、体幹を強化したことでバックステップしながらでも、正しく下がれるし、バランスを崩さずにジャンプをしてキャッチかパンチかの判断もより正確性が高まった状態でできる。怪我前よりもダイナミックなプレーができるようになったと思います」
この試合で見せたハイボール処理、セービングはまさに彼の努力が生み出したものだった。
次なる相手はJ2のV・ファーレン長崎。FWマテウス・ジェズスら破壊力抜群の攻撃陣を持つ相手に、再び敵地での戦いとなるが、今回同様に佐藤は一切動じない。
「今年のチームはボールを持てて、技術的にうまい選手が多いので、主導権を握る戦いができるチームで助かっている。だからこそ、GKである僕がDF陣と一丸となって守って行きたい。もっと安定感を出して、西川周作選手のようにすべてにおいて冷静で、チームの状況を見てプレーのリズムを変えられるような選手になりたいと思います」
偉大な先輩の立ち姿を理想としながら、佐藤はいつもどおりのプレーでチームを「2連続ジャイアントキリング」に導く。
(FOOTBALL ZONE編集部)