森保監督が重視する「コンスタントな実績」 新世代よりも…逆転W杯切符に近い注目5人

メンバー26人はかなり目新しい陣容となった【写真:徳原隆元】
メンバー26人はかなり目新しい陣容となった【写真:徳原隆元】

久々招集組となる佐野海舟、渡辺剛、森下龍矢、鈴木唯人、細谷真大の5人

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)出場権をいち早く獲得し、6月シリーズから本番に向けての本格的な底上げに突入する日本代表。その一発目となるアジア最終予選のオーストラリア(5日=パース)、インドネシア(10日=吹田)2連戦に挑むメンバー26人はかなり目新しい陣容となった。

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「年間試合出場数が多く、怪我が多くなっている選手は今回招集しなかった」

 森保一監督も23日の記者会見で語ったように、30代の伊東純也(スタッド・ランス)、南野拓実(モナコ)、守田英正(スポルティング・リスボン)らを筆頭に主要メンバーがほぼ不在。常連組で名を連ねたのは、キャプテン・遠藤航(リバプール)、鎌田大地(クリスタルパレス)、町田浩樹(サンジロワーズ)、中村敬斗(スタッド・ランス)ら10人強だけだ。

 その代わりに大量抜擢されたのが、パリ五輪世代の若い面々だ。平河悠(ブリストル・シティ)、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)ら7人が新顔という状況。U-20日本代表世代の佐藤龍之介(岡山)もサプライズ選出されている。彼らにとっては滅多にないチャンスと言っていい。

 とはいえ、森保監督は「コンスタントな実績」を重視する傾向が強く、初代表の選手がいきなりピッチに立てるとは限らない。むしろ彼らより出場可能性が高いのは、過去に代表に呼ばれていて、しばらく時間が空いた“久々招集組”の方だろう。

 そこに該当するのは、目下、世間から大いに注目を集めている佐野海舟(マインツ)を筆頭に、渡辺剛(ヘント)、森下龍矢(レギア・ワルシャワ)、鈴木唯人(ブレンビー→フライブルク)、細谷真大(柏)の5人だ。

佐野海舟はドイツで圧巻パフォーマンス

 まず佐野海舟だが、2024年1-2月のアジアカップ(カタール)に参戦。その後、鹿島アントラーズではパス出しや展開力といった課題に直面。川村拓夢(ザルツブルク)の評価が急上昇したこともあり、3・6月シリーズの招集が見送られていた。

 直後の7月頭にドイツ・ブンデスリーガ1部のマインツへ移籍が決定。「新天地でブレイクすれば、第4の代表ボランチの枠を勝ち取るのではないか」という期待が高まった。その矢先に不同意性交容疑で逮捕されるという信じがたい出来事が起きた。

 7月末に釈放され、マインツに合流。8月に不起訴処分となり、現地では今季開幕から定位置を確保。目覚ましい活躍を見せたことから、代表復帰待望論がたびたび上がるようになっていた。

 実際、本人も深く反省し、サッカーに集中。欧州5大リーグ1年目でリーグ全34試合に先発し、クラブのUEFAカンファレンスリーグ出場権獲得の原動力となった。デュエルの強さ、ボール奪取力、反応の速さと運動量は誰もが認めるところで、「遠藤航の後継者候補」とも目されている。1年半ぶりの代表の場でアピールできれば、一気にコアグループ入り、2026年W杯行きの道も開けてきそうだ。

 2024年3月シリーズ以来の復帰となる渡辺も、今回が代表定着への正念場。目下、DF陣は冨安健洋(アーセナル)と伊藤洋輝(バイエルン)が長期離脱中で、谷口彰悟(シントトロイデン)もアキレス腱断裂から復帰したばかりと手薄感が否めない。板倉滉(ボルシアMG)も今夏の移籍が噂されており、新天地に赴いた場合にはどういう扱いを受けるか未知数。その状況が彼にとっての追い風になっていると言えるだろう。

 渡辺自身もフェイエノールトへの移籍話が浮上するなど、去就が流動的ではあるが、今季のヘントで34試合出場という安定感あるパフォーマンスを見せたのは確か。その実績と実力を1年3か月ぶりの代表で示すことが、厳しい生存競争で勝ち残るための必須条件だ。

 彼の場合、森保監督と過去に行き違いがあったとも言わているだけに、やはり圧倒的な存在感を見せなければ、「他の選手を外して剛を使いたい」とは考えてもらえない。「最終予選で呼ばれていた瀬古歩夢(グラスホッパー)、高井幸大(川崎)らをごぼう抜きしなければ、9月以降のメンバー入りはない」というくらいの強い覚悟を持って、活動にのぞんでもらいたい。

ドイツにステップアップの鈴木唯人にも期待

 2024年6月のミャンマー戦(ヤンゴン)で初キャップを飾った鈴木も1年ぶりの復帰。デンマーク1部に赴いた2023-24シーズンは26試合出場9ゴールだったが、今季は31試合出場11ゴールと数字を引き上げ、存在感を高めたことが評価されたのだ。

 彼の場合はパリ五輪世代のグループにも入っているが、他の新顔に比べると明らかにアドバンテージがある。代表実績に加えて、すでに来季からドイツのフライブルクへ完全移籍することが正式発表されたからだ。

 同クラブは移籍が有力視される堂安律の後釜として期待している様子で、佐野海舟のように欧州5大リーグ1年目で目覚ましいインパクトを残せば、森保監督も放ってはおかないだろう。

 鈴木の陣取る2列目のポジションは代表最大の激戦区とも言えるが、彼が非凡なゴールセンスをいかんなく発揮してくれれば、逆転W杯出場も十分あり得る。1年前のミャンマー戦のときはまだ遠慮が見られたが、同世代の仲間が数多くいる今回はいい意味でエゴを出し、結果を残すことが求められる。

 そして、森下も2024年1月1日のタイ戦(東京・国立)以来の1年半ぶりの代表となる。第2次森保ジャパン発足後は何度か招集され、明治大学の先輩に当たる長友佑都(FC東京)の後継者候補という見方もされたが、昨年の段階では指揮官のお眼鏡には叶わなかった様子だ。

 しかしながら、タイ戦直後に赴いたポーランドでは攻撃的な役割を担うことも多く、攻撃力に磨きがかかった様子だ。守備面に関しては粘り強さと球際の強さに定評があり、ポーランドの大柄なプレーヤーと駆け引きを重ねることで感覚的にも磨かれたに違いない。そのストロングをアピールすることで、代表定着が見えてくるかもしれない。今回は先輩・長友との共闘が初めて実現するだけに、それも含めて彼の一挙手一投足が楽しみだ。

 最後に細谷だが、彼は最終予選の一発目だった昨年9月シリーズに呼ばれているFW。アジアカップなども経験していて、“久々招集組”のなかでは最も代表実績がある選手と言えそうだ。

 けれども、今季の柏レイソルでは絶対的FWに君臨することができていない。リカルド・ロドリゲス監督体制では垣田裕暉、木下康介と横一線の扱いで、途中出場の方が多い。そういう細谷を森保監督があえて招集したのは「パリ世代のエースFWを戦力にしなければならない」という使命感があってのことだろう。

 本人もわざわざ呼んでくれた指揮官のためにも、ゴールという形で恩返しし、9月以降の活動につなげていかなければならない。柏での序列はいったん横に置き、フレッシュな気持ちで代表FW争いに挑むことで、何か違った変化が起きるかもしれない。彼には大橋祐紀(ブラックバーン)、町野修斗(キール)らといい競争を繰り広げてもらいたい。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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