進化する三笘薫、伝説級の「衝撃的な打点」 コピーは不可能…非凡な身体操作能力

リバプール戦でゴールを決めた三笘薫【写真:IMAGO / IPS】
リバプール戦でゴールを決めた三笘薫【写真:IMAGO / IPS】

三笘薫がリバプール戦で衝撃ボレー弾、際立った「身体の使い方」

 プレミアリーグ第37節、ブライトンvsリバプール。三笘薫のボレーシュートで2-2の同点としたブライトンは、後半40分にヒンシェルウッドの勝ち越し弾で3-2とホーム最終戦に勝利した。

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 後半24分の三笘のボレーシュートは衝撃的だった。

 左サイドでボールを持った三笘が、対峙するDF2人の間を通すパスをウェルベックに送る。ウェルベックのシュートはGKアリソンに阻まれたが、大きくバウンドしたボールに三笘がいち早く反応し、左足のボレーでゴール。何が衝撃的だったというと打点の高さだ。そして、まるでバレーボールのスパイクのようにボールを上から叩いていたことである。

 ボレーシュートが決まると非常に鮮やかで、2002年UEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝でのジダンの左足ボレーは語り草になっている。日本代表なら、2011年アジアカップ決勝での李忠成のボレーが印象的だった。

 ある外国人指導者が言っていたのだが、「日本の選手はあまりボレーが上手くない」らしい。プロではなく主に育成年代での話だが、その原因として挙げていたのが股関節の硬さだった。ボレーシュートでは、蹴り足を地面とほぼ水平に振る必要がある。下から上に振ってしまえばシュートが上に飛んでしまうからだ。そのためには、まず蹴り足の膝を腰の高さくらいまで引き上げ、そこから地面と水平またはやや下向きに足を振ることでシュートの軌道を抑えることができる。ところが、日本の選手はこの足の引き上げが上手くできない場合が比較的多い、という話だった。

 印象的なボレーシュートのゴールとして例に挙げたジダン、李のケースでも、身体を倒しながら十分に足を引き上げて振っている。どちらも美しいボレーだった。しかし、今回の三笘はその域を超えている。

 水平ではなく、上から斜め下に左足を振り下ろしているのだ。ジダンや李のように、滞空時間の長いクロスボールに合わせたわけではないので優劣はつけられないけれども、左足の振り方についてはあまり見たことがないものだ。しかも利き足ではない。

 とっさにあの身体の使い方ができるところに三笘の非凡さが窺える。このリバプール戦でも見せていたワンタッチコントロールの上手さや、彼の代名詞になっているドリブルのスピードもさることながら、身体操作能力が抜群なのだ。

 ボールを扱う技術だけでなく、自分の身体を扱う能力が高い。三笘のドリブルを形だけ真似することはできるかもしれないが、切り返し1つとってもあれだけの幅を出せる人はなかなかいない。今回のボレーシュートをコピーできる選手はさらに少ないと思う。

 驚異的なボレーで今季の得点は10点となった。多くは今年に入ってからのもので、ウインガーからゴールゲッターへプレーの比重をシフトして得点を伸ばしている。アシストだけでなく得点を量産する選手になっていく転機となるシーズンだったのかもしれない。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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