街クラブ→J下部組織「無理だろうと思って受けたら」 身長191cm…プロ狙う逸材3年生

日本体育大学の小林隆、甲府トップ昇格ならず「4年後に絶対にプロになる」
日本体育大学の最終ラインにおいて、191センチという圧倒的なサイズと飄々とした表情で硬いディフェンスを見せるCB小林隆は、一言で言うと常に下克上を狙っている選手だ。
彼に話を聞くと、常に『格上』というワードが出てくる。今年昇格を果たした関東大学サッカーリーグ1部の第3節・筑波大との一戦の後に話を聞くと、「相手が格上の筑波だったのですが、マークやスライドの隙を突かれて、少し混乱をしてしまって2失点を喫しました。1点を返して流れは来たと思うのですが、向こうが上手でした」と口にした。
この試合、筑波大に1-2で敗れた。だが、前半の失点シーン2つ以外は日体大の守備は大きく崩れなかった。小林も制空権と的確なカバーリングを見せるなど、CBコンビを組む小笠原広将と共に最後まで集中力を切らさずにプレーをした。
「日体大では1年生の時から試合に出させてもらって、(関東2部の)早稲田大や法政大など僕からしたら格上の相手、選手とガチで戦わせてもらえた。最初はビビっているところはありましたが、徐々に自信を持ってやれるようになりました。1年の時に昇格争いをさせてもらって、昨年も1試合以外は全て出させてもらって、昇格をすることができた。今年も開幕で王者の明治大と戦うことができて、自信を重ねさせてもらっています」
このコメントを聞くだけでどこまでも謙虚だということが分かる。なぜ彼ほどのポテンシャルと能力を持っている選手がここまで相手をリスペクトしているのか。それは彼のこれまでのサッカー人生に起因していた。
地元・山梨出身の彼は小学校時代、小さな街クラブでプレーしていた。小6の途中からプレーしていた甲斐CIELOのスタッフから「ヴァンフォーレのセレクションを受けてみたらどうだ?」と言われたのがターニングポイントだった。
「最初は地元のクラブチームに行こうと思っていました。当時の僕にとってヴァンフォーレのアカデミーは雲の上の上の存在だったので考えてもいなかったんです。『無理だろう』と思って受けたらなぜか受かったんです」
思いも寄らないまま甲府U-15での日々がスタートするが、「最初の1年間は怒られまくっていたほど下手でした」と振り返るほど、レベルの高い周りについていくのがやっとだった。
だが、2年になると徐々に頭角を現して行った。「実力が劣る分、自分はもうやるしかないんです」と日々の練習に打ち込み、自分のサイズをどう活かすか、課題だった背後の対応やカバーリングなどからも目を背けずに向き合った。
DFリーダーとして君臨するようになると、チームもJリーグU14メトロポリタンリーグBで優勝し、中学3年生になると関東ユース(U-15)サッカーリーグ2部でも2位に輝いた。さらに高円宮杯第31回全日本ユース(U-15)サッカー選手権でU-15アカデミー史上初の全国大会に出場。小林はその年、U-15日本代表候補にも選出された。
メキメキと力をつけて行った彼だが、それでも「周りは全部格上だと思っていました」。
「もうフロンターレU-15、マリノスジュニアユースなんて雲の上の存在であることには変わりはありませんでしたし、(甲府)ユースに上がることはできましたが、高校でもそれは一切変わりませんでした」
トップ昇格を果たせなかったが、彼はすぐにその現実を受け入れ、高校2年生の時から熱心に声をかけてくれた日体大への進学を決めた。
「トップに上がれなかったのは全てにおいて足りなかったから。トップに上がれるだけの実力はなかったからこそ、4年後に絶対にプロになるという。勝負できる存在になると心に決めました」
そして彼は今、着実にステップアップをして来ている。4バックでも3バックでも対応できる順応性を持ち、ロングフィードとビルドアップの関わりの精度は確実に増した。
それを伝えても、「まだまだです。対戦相手の大学には高校時代から有名な選手たちがたくさんいて、僕より格上の選手たちばかりだからこそ、僕は毎試合毎試合、相手に負けない、封じ込めるという気持ちを持って挑んでいます」と、彼は自分の姿勢を崩さない。
「相手をリスペクトしすぎないほうがいい」――。
これも一理ある。だが、彼の場合はリスペクトしすぎているほうが能力を発揮できるのではないかとも思う。この謙虚な気持ちを彼は「俺なんかが……」と卑下することなく、「だったら、俺は人一倍努力するしかない」というメンタリティーに変え続けたからこそ、今の彼があると思う。
彼の謙虚さは裏を返せば、「誰にも負けたくない」という強い意志の表れでもある。心の根底にある「プロになって活躍したい」という強い思い。これからも彼は謙虚にかつ虎視淡々と野心を抱きながら上のステージを狙っていく。
(FOOTBALL ZONE編集部)