海外サポも衝撃…24歳日本人の“疲労困憊”弾 W杯で生きる日本代表の財産【コラム】

スタッド・ランスで活躍する中村敬斗【写真:IMAGO / ZUMA Press Wire】
スタッド・ランスで活躍する中村敬斗【写真:IMAGO / ZUMA Press Wire】

スタッド・ランス中村敬斗が圧巻2ゴール、耐え抜いた末の一撃に見た可能性

 フランス・リーグアンの第29節にランス対決があった。RCランス対スタッド・ランス。アウェーのスタッド・ランスが中村敬斗の2ゴールで勝利。これでスタッド・ランスは15位に浮上して降格およびプレーオフ圏内から脱出。16位のルアーブルとは2ポイント差、自動降格となる17位(サンテティエンヌ)とは5ポイント差。残り5試合、残留が見えてきた。

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 ちなみにカタカナ表記だと同じランスになるが、フランス語のスペルはLensとReimsで全然違う。RCの方はほぼそのままランスに近いけれども、スタッドのほうは喉音が入るのでレアンスとかハァーンスにも聞こえる。発音は結構違うのだがカタカナにすると同じランスなのでちょっとややこしい。

 伊東純也、中村敬斗、関根大輝の日本代表選手3人が所属するスタッド・ランスはフランスの古豪。名将アルベール・バトー監督に率いられて1950~60年代に6回もリーグ優勝している。チャンピオンズカップ準優勝2回。ジュスト・ファンテーヌ、レイモン・コパを擁するトップクラブだった。しかし、その後は3部まで落ちて長らく低迷していた。

 むしろ2000年代に入るまでランスといえばRCのほうで、1997-98シーズンはエルハジ・ディウフらの活躍でリーグ優勝している。第29節の対戦もスタッド・ランスが格上のRCランスに挑む形だった。

ずっと動きっぱなしだった中村敬斗

 挑むというより、アウェーのスタッド・ランスは専守防衛の構え。5-4-1で自陣に引き、RCランスが攻め続ける流れが続いた。残留争いのスタッド・ランスはこのところ守備的な戦い方だ。伊東と中村のポジションは一応シャドーなのだが、ほとんどの時間を守備で忙殺されている。ただ、3-1で勝った第27節マルセイユ戦のように少ないチャンスを決める勝負強さを見せていて、RCランス戦でも立ち上がりから押し込まれたが、前半33分にワンチャンスを活かして中村が先制した。
 
 しかし、その後もワンサイドゲームは変わらず。スタッド・ランスはビルドアップが全くできないので偶発的なカウンター以外はほぼ自陣を出られない。GKエフバン・ディウフの大活躍で辛うじて無失点のままだったが、5点くらい入っていても不思議ではない流れだった。

 ところが、耐えに耐えた後の後半43分に中村が値千金の2点目を決める。
 
 カウンターになって左サイドを激走した中村へラストパスが渡り、ダイレクトでゴール右隅へ流し込んだ。得意の角度、フリーの中村が逃すはずがない。このシュートの瞬間、足がつっていた。それもそのはずで、たまにカウンターで長距離をスプリントしたあとも守備に戻らなければならず、奪ってもキープできないので一息入れる間もなく、ずっと動きっぱなしだったからだ。

 疲労困憊の状態で2点目を決めた中村のプレーはサポーターの心を震わせたに違いない。また、もしかしたら日本代表にとってもこれは何らかの財産になるかもしれない。ワールドカップとなれば守勢に追い込まれる試合も予想される。日本はもっとボールをつなげるのでスタッド・ランスのようにはならないとしても、強豪相手に押し込まれる可能性は高い。そうなった時に中村、伊東、関根の経験は生きてくるかもしれないからだ。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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