日本人獲得…欧州強豪の新発見「凄い選手が出てきた」 現地記者も指摘「時代の流れを感じる」【インタビュー】
日本代表DF伊藤洋輝、韓国代表DFキム・ミンジェのアジア人2選手を名門が高評価
日本代表DF伊藤洋輝がドイツの強豪バイエルン・ミュンヘンに移籍し、昨季ナポリから加入した韓国代表DFキム・ミンジェとともに2人のアジア人センターバック(CB)が名門クラブに名を連ねている。伊藤の存在により、キム・ミンジェの去就に影響が出るのだろうか。あるいは日韓DFの共闘が今後も長らく続くのか。ブンデスリーガに精通し、日本人選手の動向にも注目しているドイツ人記者キム・デンプフリング氏が考察した。(取材・文=中野吉之伴/全3回の3回目)
【PR】ABEMA de DAZN、明治安田J1リーグの試合を毎節2試合無料生中継!
◇ ◇ ◇
――バイエルンは伝統的に4バックを続けてきましたが、昨季はトーマス・トゥヘル監督が3バックを取り入れていましたし、ヴァンサン・コンパニ新監督も第2節フライブルクでは3バックの変形布陣で臨んでいます。3バックで伊藤、キム・ミンジェ、ダヨ・ウパメカノが組む形はあり得そうでしょうか?
「それは考えられそうなアイデアですよね。バイエルンはアウトサイドに優れた選手を多く抱えているので、彼らがサイドで変化をつけやすくするために3バック採用というのはあり得るし、興味深いオプションになるのではないかと思います」
――キム・ミンジェと伊藤の日韓CBコンビという組み合わせの実現性はどうでしょうか?
「ウパメカノにしてもシーズン通してフル稼働できるわけではないですし、伊藤の落ち着いたビルドアップ能力や守備での対応がバイエルンサッカーに上手く順応したら、キム・ミンジェと伊藤でコンビを組む試合も十分に考えられると思います」
――ボランチに守備力のあるポルトガル代表MFジョアン・パリーニャも加入しました。ドイツ代表MFヨシュア・キミッヒとアレクサンダー・パブロビッチのボランチコンビが上手くはまり、ここまであまり活躍の機会はないですが、必要となる時期が来るのではないかと考えています。そうなると伊藤の起用にも影響がありますよね?
「そのとおりですね。パリーニャが最終ラインの前で防波堤になれたら、CBへの負担も間違いなく軽減されます。そうなればボールを保持した時、パスの出し手としても活躍が期待できる伊藤の起用法に影響があるはずです。シーズンは長いですし、対戦相手もさまざま。パリーニャや伊藤、キム・ミンジェ、ウパメカノにしても、コンパニ新監督のゲームプランを実現するために大切な戦力だというのは間違いないと思います」
――アジア人選手が名門クラブでここまで台頭するのは、一昔前からすれば想像しづらいことだったかと思います。アジア人選手に対する価値は、近年一気に高まったと感じていますか?
「間違いないですね。アジア人選手の価値は、ここ15年ほどで明らかに上がってきていますよね。守備的な選手に関しては一時期ちょっと落ち着いた時期もありました。CL(UEFAチャンピオンズリーグ)出場クラブで活躍した選手で言うと、シャルケの内田篤人がいましたが、どちらかと言えば珍しいケースだったと思います。そんななか、CBとしてヨーロッパのトップレベルのクラブでプレーをするのは、欧州や南米の特に優秀な選手がリストアップされてきた過去を考えると、バイエルンで2人のアジア人選手がしっかりと戦力として獲得されたという事実は特筆すべきことだと思います。
そして、これはほかの欧州強豪クラブにとっても、新たな発見につながることだと思います。アジアには足もとのスキルに長け、フィジカルで負けず、競り合いに強く、戦術理解度の高いCBが確かにいるのだということが認められたわけですから。MFやSB(サイドバック)のポジションでは、これまでも優れた結果を残すアジア人選手がいましたが、CBにも凄い選手が出てきたということに時代の流れを感じます」
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。