黒田監督が訴え「管理してほしい」 ロングスロー用タオル巡る攻防…日本代表OBが提言する“ルール設定”【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】広島が町田のロングスロー用タオルを回収…水で濡らす行為も波紋
FC町田ゼルビアは、9月28日に行われたJ1リーグ第32節で首位サンフレッチェ広島に0-2で敗れ、3位に転落した。ロングスロー用のタオルを広島サイドが“ピッチ外”で触った件について、黒田剛監督はルール明確化の必要性も唱えたが、日本代表OB栗原勇蔵氏は「ルールは決めたほうがいい」と持論を述べている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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天王山は2万6655人が駆け付けた白熱の一戦となった。一方で“場外戦”も勃発し、前半20分過ぎに広島のベンチ選手がロングスロー用のタオルを回収したり、水で濡らすなどの行為があったとして、黒田監督自身もベンチから激しく抗議していた。試合後、指揮官はこの点についても触れた。
「抗議はしますけど……やられ放題では(いけないので)。反スポーツ的行為に値すると思う。相手が用意したものに対してそれを隠すとか、袋のチャックを開けて中に水を差し込むとか…これは行為はやってはいけない。それを黙認している周囲もありましたから。正々堂々と守備の対応でやってほしい」
ロングスロー用のタオルについては、8月31日に行われた第29節浦和レッズ戦で相手のフィジカルコーチであるヴォイテク・イグナチュク氏がタオルを袋ごと持ち去り、自身の頭を拭くシーンで物議を醸し、直後には第4審に口頭で注意を受ける場面もあった。
日本サッカー協会(JFA)の審判委員会は9月11日のメディアブリーフィングで、「リーグとしてはタオルを置くことは禁止していない。間隔や枚数に何かを言うわけではないが、両チームがいてこそのものなので配慮はして欲しい。レフェリー側だけでこれはダメというものではなく、自分のチームのベンチサイドに相手のものがあるというのもあっての反応という部分もあると思うけど、すべてについてレフェリーが入るものではないと思う」と説明していた。
栗原氏が主張…相手のタオルの濡らすのは「非紳士的行為」
厳密なルールがない事象を巡る攻防となっているわけだが、黒田監督は広島の行為について「ロングスローがあるのであれば、ロングスローの守備での対応力で(相手)チームを阻止するべき。ルールにないとはいえ、そういうことは……。人のもの、相手チームが用意したものなので、そういうものはスポーツマン的な行為として良くない。それを許すと水に何かを入れていいとかになってしまう。止める人が誰もいなかった。管理してほしいなと思います」と、必要であればルール設定や明文化を訴えかけた。
日本代表OB栗原氏は、「相手のタオルを濡らすのは非紳士的行為だと思います。やっていることは子供のような話」と前置きしたうえで、「ルールは決めたほうがいい」との見解を述べている。
「ロングスロー自体は立派な戦術で、これだけ揉めるのは脅威になっている証。基本的に、滑る物を(タオルで)拭くのは意味があると思うし、以前からも行われています。タオルを使うのは今に始まったことではなくて、正直、自分の現役時代は、相手がタオルで拭いてくる前提で守備をしていましたし、揉めたこともないです。例えば、粘着スプレーとかになれば話は変わりますけど、ロングスローでタオルは使うのは当然だし、着ているユニフォームで拭く選手もいるくらいですから。
個人的な意見ですが、競技のパフォーマンスが上がることを禁じるのは違う気がしていて、議題に上がるのがおかしい。逆に、普通のスローインは10秒くらいだとして、ロングスローで拭いて助走だと倍くらいかかってインプレー時間が短くなるので、そこには時間制限があったほうがいい気がします」
ロングスローの際に時間をかけ過ぎではないかという話題についても、審判委員会は「ロングスローは時間だけ測るとそうなるが、サッカーの1つの戦術でもある。だからと言って際限なく時間をかけていいものではないし、全部ダメ、全部いいではない。時間帯や得点差によっても受け取られ方が違うなかで、レフェリーがどうコントロールしていくか」と、レフェリーの臨機応変な裁量でコントロールすべきものだとしていたが、今後どのようなすり合わせが行われていくだろうか。
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。