- HOME
- 今日のピックアップ記事
- YouはなぜJリーグの虜に? 中国人ファン3人が語る日本サッカーの魅力と課題【インタビュー】
YouはなぜJリーグの虜に? 中国人ファン3人が語る日本サッカーの魅力と課題【インタビュー】
【中国人ファン鼎談】なぜ日本のJリーグに魅了されたのか
Jリーグファンのみなさま、こんにちは。久保田嶺です。本日は特別企画「僕らから見たJリーグ~中国人編~」ということで、在日中国人のJリーグファン3名によるクロストークを行いました。それぞれFC東京、横浜F・マリノス、浦和レッズの年間会員であり、ホームゲームにはほとんど参戦、そしてJリーグ全体にも魅了されているという中国人サポーターたちです。中国人の彼らには今のJリーグや応援しているクラブがどう見えているのか、何に魅了されているのか、訊いてきました。
【PR】ABEMA de DAZN、明治安田J1リーグの試合を毎節2試合無料生中継!
◇ ◇ ◇
――みなさん、今日は暑い中お集まりいただき、ありがとうございます。それぞれ応援されているチームのユニホームがばっちり似合っていますね。
李さん「ありがとうございます。今日着てきたのはもちろん背番号7番、松木玖生選手のユニフォームです。移籍してしまいましたが、これからもずっと応援しています」
危さん「僕もお気に入りの浦和ユニフォームです。でも、1つ秘密があります。ここで言っていいのか分かりませんが(笑)、みなさんなんだか分かりますか?」
張さん「まさか偽物ユニフォームですか?(笑)。よく見たら少し違う気が」
危さん「そうです。全然気づかないですよね? 中国のECタオバオで買ったものです。日本の半額なので買ってしまいました。この記事は、浦和レッズの関係者の方も見られるかもということで大変申し訳ありません。しかし、せっかくなので赤裸々に話そうと思いまして(笑)。約束します、来シーズンからは日本で本物を買います」
張さん「さすがタオバオです(笑)。みなさん、こんにちは。僕のは本物のマリノスの今シーズンのユニフォームです。背番号2、永戸勝也選手のです。中国人でも本物を買っている人がほとんどということを、僕から強調させていただきます」
浦和レッズのサポーターは「アジアで一番」
――ありがとうございます。危さんは“厳重注意”のイエローカードということで(笑)。では、早速ですが、みなさんが各チームを応援し始めたきっかけを教えてください。
張さん「僕は元々サッカーが好きな上海出身の人間で、2年前に横浜へ留学に来ました。そこで横浜F・マリノスというチームが横浜のビッグチームということは街を歩いていても自然と分かり、そこから応援するようになりました。あとは中国では上海申花というチームを応援していますが、両方とも青がチームカラーということで、これは応援するしかないなと、そういう始まりです」
危さん「僕は10年以上前に日本へ留学に来て、そこからずっと日本で働いています。当時最初に住んだ街が埼玉の和光で、浦和レッズの試合を見に行きました。それであの真っ赤なスタジアムを目の当たりにしてゾクゾクっとしました。そこから一瞬でサポーターになり、今では毎試合応援しに行っています」
李さん「僕はまず中国ではほとんどサッカーは見ていませんでした。元々留学から日本に来て今では8年ほどになりますが、基本的に東京で忙しく不動産業を行っており、Jリーグとは縁のない生活を送っていました。しかし、去年の年の瀬にFC東京に中国にルーツを持つ高宇洋選手が加入するとニュースで知り、そこから興味を持ちました。しかも彼の父は元中国代表の選手で私も知っており、それなら東京住民ですし、応援しようと。その後スタジアムに行ったら素晴らしい雰囲気で、すぐに年間チケットを買い、今では駆け出しですが熱烈なサポーターの1人になったと自負しています」
――みなさんがそれぞれ応援しているチームの好きなところを聞かせてください。
張さん「マリノスはまず『民衆の歌』という応援歌が最高です。あれをみんなで歌う時は本当に気持ちが高ぶります。あとは今シーズンは少し難しいですが、基本的にアタッキングサッカーで強いです。先日はACL(AFCチャンピオンズリーグ)でも2位になりましたし、やはり強いという点も好きです」
李さん「僕はFC東京の国際的なところが好きです。今はスタジアムに行っても外国人の観客も多く、日本の首都東京のクラブというのを感じます。私は池袋に住んでいるため国立開催の時はより便利ですが、味の素スタジアムにも1時間もかかりません。むしろ応援しに行くぞというスイッチを入れられる距離感が好きです」
危さん「レッズはやはりあのサポーターです。今でも毎試合驚きますし、アジアで一番だと思っています。あとは浦和美園駅のイオンも大好きです。試合の時はいつも駐車しているのでお世話になっており、品揃えもなんでも揃うので感謝しています」
Jクラブには「サッカー専用スタジアム」や“世界的ビッグネーム”がさらに必要
――では、それぞれのチームで今までで一番印象に残っている試合はありますか?
張さん「僕は去年6月の横浜F・マリノスvs柏レイソルの試合です。その試合はマリノスが4-3で逆転勝利して、そしてちょうど中国から旅行に来ていた友達をスタジアムに連れて見に行っていました。あまりに劇的な試合で彼もすぐにマリノスのファンになりました。忘れられない一戦です」
危さん「僕は2023年11月のルヴァンカップ決勝 浦和レッズvsアビスパ福岡戦です。僕も国立競技場にレッズが優勝する姿を見に行っていたのですが負けてしまいました。本当に残念だったというのと、6万人の大観衆、そしてレッズの選手の諦めない姿勢にとても胸を打たれ、忘れられない一戦になっています」
李さん「危さんのレッズサポーターとしての気持ちは偽物じゃないんですね(笑)。僕は今年4月の東京ダービー、東京ヴェルディvsFC東京の試合です。0-2になってしまい負けを覚悟したのですが、そこからぎりぎり追い付いた試合です。ダービーということで絶対に負けたくなかったので、追い付けて大興奮でした」
――では、外国人からの目線というのも踏まえて、何かチームへの意見はありますか?
危さん「外国人だからどうのこうのというのはないです。強いて言えば、僕の印象でレッズは0-0の試合が多すぎると思っています。浦和らしいと言えば浦和らしいとも思っているのですが」
張さん「これはマリノスの日本人サポーターの方々ももちろん言っていますが、専用スタジアムがあればもっと嬉しいのは間違いないです。それが唯一の不満と言えば不満です」
李さん「僕は首都のクラブらしくビッグな外国人選手を連れてきてほしいです。以前のアンドレス・イニエスタ選手のようなビッグネームが東京のクラブには必要だと思っています」
Jリーグの安全性や経営の安定さは評価に値
――では、御三方から見て、中国リーグとJリーグの違いは何ですか?
危さん「さんざんレッズのスタジアムの雰囲気を褒めておいてなんですが、中国リーグも試合の雰囲気はJリーグに負けていないと思います。観客数や専用スタジアムの数ではむしろJリーグより多いですし、試合後のペンライトを活用した演出なども行っています。では何が違うかというと、リーグ全体のレベルの拮抗だと思います。Jリーグは上位チームと下位チームの実力の差がほとんどないので、すべての試合が面白いです。しかし、中国は上位チームと下位チームの実力差が大きく、最近でも上海海港が南通に8-1で勝利しました。レベルの差があって白熱しない試合も少なくないと思っています」
李さん「僕はJリーグはとても安全だと思うのでそこが好きです。中国リーグは喧嘩が多すぎます(笑)。盛り上がるのはいいのですが、過剰すぎる対立は不要だと思っているので、そこは違いがあると思います」
張さん「あとはなんと言っても、チームの解散がJリーグはないことです。日本のみなさんにとっては普通かもしれませんが、これは凄いことだと思います。中国リーグは毎年数チーム解散してしまうのが当たり前で、そこが一番の違いだと思います。あとは各クラブがなんのために存在しているのか明確に意識していて、地域活動やイベントなどへ取り組む量が両リーグでは全く違うと思います」
――何かJリーグ全体に対して不満や提言はありますか?
危さん「さっきの李さんと少しかぶるのですが、大物選手を獲得してほしいです。イニエスタ選手がいなくなってしまってから正直世界レベルのスターがJリーグに不在だと思っています。もし大物選手が来れば中国からも見に来る人が多いと思います。今は中国リーグにもスターがいなくなってしまったので、絶好のチャンスだと思います。レッズに来てください」
李さん「不満は全然ありません。高選手のように少しでも中国にルーツのある選手が増えればそれは僕らは嬉しいですが、中国人選手が来るのは簡単ではないことも理解しています。あとは中国では賭けの対象でJリーグを見ている人も多いので、そこに対して何かやれればビジネスチャンスがあるのではと思っています」
張さん「僕は現在大学院生で来年からIT企業で働きますが、今後もしチャンスがあればJリーグ関係のクラブや企業で働いてみたいと思っています。しかし中国人が働くチャンスのある場所は少ないと思います。元々狭き門なのは知っていますが、もし僕がIT企業で無事に成長できましたら、ぜひチャンスをくれると嬉しいです(笑)」
――では、最後に応援している各クラブへ、一言ずつお願いします。
張さん「マリノスはACLエリートで上海申花と同組になりました! 対戦をとても楽しみにしています!」
危さん「レッズをずっと応援します! WE ARE RES! Jリーグは(中東の)石油リーグに負けないでください!」
李さん「FC東京は優勝できるチームになりましょう! そして、JリーグチームにACLで優勝して欲しいです!」
(久保田嶺 / Rei Kubota)
久保田嶺
1991年生まれ、埼玉県出身。「Rouse Shanghai Co.,Ltd.」代表。日系企業の中国インバウンド事業やマーケティング、中国サッカー選手/指導者のマネージメントを手掛ける。自身の中国SNSフォロワー数も40万人と中国サッカー界で一番有名な日本人としても活躍。日本へ中国サッカー情報を発信する。