24歳日本人MF、なぜ強豪校卒業→ドイツ挑戦を決断? 名門ドルトムントも打診…5部から“成り上がり”舞台裏【インタビュー】

アルミニア・ビーレフェルトでプレーする水多海斗【写真:本人提供】
アルミニア・ビーレフェルトでプレーする水多海斗【写真:本人提供】

ドイツ3部ビーレフェルトの水多海斗が語るドイツ行きの経緯とその後

 現在ドイツ3部アルミニア・ビーレフェルトでプレーする24歳の日本人MF水多海斗は、前橋育英高校を卒業後、なぜ日本国内のクラブではなくドイツを選んだのか。ドイツ5部クラブへの加入、そして4部クラブへのステップアップ移籍の舞台裏を紐解く。(取材・文=中野吉之伴/全5回の2回目)

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 育成年代をFC東京U-15むさし、前橋育英高校で過ごした水多海斗は、高校卒業後の進路にドイツを選んだ。

 高校3年生の時に足を骨折し、約5か月間も戦線から離脱した水多はインターハイに出場できず、Jリーグや大学のスカウトに見られることもなかったという。J3や大学進学の可能性も考えたが、最終的にドイツでのチャレンジを選んだ。行き先としてドイツを選んだ背景には、どんな経緯があったのだろうか。

「正直ドイツっていうこだわりはなくて、ただヨーロッパでプレーしたいっていうのはありました。ドイツを選んだきっかけは、先にドイツに行ってる友達がU-19のあるクラブでプレーをしていて、『ドイツいいぞ』っていうのを聞いたんです。ただドイツに来たものの最初は自分が行きたいようなチームの練習に参加できなくて。たまたまデュッセルドルフの国際ユース大会で、日本の高校選抜に僕の同期がちょうど来ていたので、見に行ったんです。その時に当時5部のSVシュトラーレンというクラブに繋がってる人と知り合えた。そんな縁もあって2週間練習参加したあとに加入が決まりました」

 シュトラーレンで4部昇格を果たした水多は初年度こそ途中出場が多かったが、2年目からは完全にレギュラーに定着し、4部で2年間プレー。そこで同じリーグに所属していたマインツのU-23に移籍することになる。

「その頃、結構オファーをいただいていたんです。それこそ実はボルシア・ドルトムント(リザーブチーム)やシャルケ、ケルン、デュッセルドルフからもあったんですが、当時マインツで育成部長だった人が僕の代理人に毎日のように連絡をくれて、『マインツに来たら絶対にプロにさせる』って言ってくれたんですね。マインツの育成の評判がいいことはいろんな人に聞いていましたし、ドルトムントも当時3部へ昇格したところでそうなると出場が難しくなるかも、という考えもありました」

名指導者が水多を評価「カイトはいいプレーをしている。順調な成長をしていると思う」

 マインツ育成部長の名はヤン・ジーベルト。ボーフムやドルトムントの下部組織で指導後、プレミアリーグのハダーズフィールドで指揮を執り、のちにマインツU-23監督として水多らを指導し、今季ボー・スベンソン監督辞任後にトップチームの監督も務めた人物だ。

「マインツが一番熱心に話をしてくれたので決断しました。ヤンが本当に熱心だったので、本当に欲しがってるところに行こうって。結果的にはこうやってプロになれて。本当にいろいろお世話になったクラブです。マインツに来て本当に良かったです」

 ジーベルトは、筆者がドイツサッカー協会公認A級ライセンスを獲得した時の同期でもある。講習会後も親交があり、マインツのオフィスで話をしていた際に水多の話題になった。ジーベルトはニコっと笑って話し出す。

「いい選手だよ。カイトはいいプレーをしている。順調な成長をしていると思う。本来は中盤センターの選手だけど、サイドでプレーするクオリティーもある。技術レベルが高くて、前に何度も出ていける持久力がある。前線でプレーするには少しスピードが足らないかもしれないから、1つうしろのポジションでプレーをしてもらっている。最終的にどこが彼にとって最適かはこれからだろうけど、インサイドハーフなんかも面白いと思っているよ」

 マインツU-23で着実に出場経験を積み重ね、その試合数は100を超えた。22-23シーズンには4部リーグでプレーする全オフェンシブMFで最高評価も獲得。トップチームで練習するのも日常化し、22年10月にはドイツカップでメンバー入りも果たした。

 そろそろ次のステップアップを踏む時期だと思われていた水多が決断したのはマインツ残留ではなく、3部ビーレフェルトへの移籍だった。

※第3回へ続く

[プロフィール]
水多海斗(みずた・かいと)/2000年4月8日生まれ、東京都出身。中野島FC―FC東京U-15むさし―前橋育英高―SVシュトラーレン(以降ドイツ)―マインツII―アルミニア・ビーレフェルト。高校卒業後の2019年にドイツへ渡り、当時5部のシュトラーレンに加入。21年にマインツへ移籍し、1部でベンチ入りしたものの出場機会はなかった一方、22-23シーズンにはセカンドチーム(4部)でリーグ戦31試合出場10得点10アシスト。23年夏、かつて尾崎加寿夫、堂安律、奥川雅也らが在籍したビーレフェルト(3部)へ移籍し、今季リーグ戦25試合に出場し、5ゴール5アシスト(第35節終了時)の活躍を見せている。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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