移行導入→リーグの発展へ 26-27シーズンから「秋春制」採用、全会一致で決定の舞台裏

Jリーグのシーズン移行が全会一致で決まった背景とは?(写真はイメージです)【写真:徳原隆元】
Jリーグのシーズン移行が全会一致で決まった背景とは?(写真はイメージです)【写真:徳原隆元】

12月19日の理事会で移行が正式決定

 Jリーグは12月19日に第12回理事会を実施し、2026-27シーズンから秋にリーグ戦が開幕する「秋春制」に移行することが正式決定したと発表した。

 今年30周年を迎えたJリーグだが、「秋春制」への転換が初めて本格的に議論されたのは、2008年のこと。それ以降、何度も検討されてきたが、2017年12月には今後10年間の議論が凍結されることになっていた。ところが、2022年2月にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が「秋春制」に移行することが決定。現在、開催されているACLはすでに「秋春制」で行われている。

 ACLでは横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、ヴァンフォーレ甲府の3クラブが、9月から12月にかけて行われたグループステージを突破。ACLの決勝トーナメントは来年2月に再開するが、グループステージを戦った2023シーズンのチームではなく、2024シーズンのチームで戦うことになる。Jリーグを戦った先にあるACLとのシーズンを一致させることの必要性は、監督や選手の去就が話題になっている今の時期、より強く感じられるだろう。

 とはいえ、ACLに出場するクラブの数は限られる。それが今回の理事会では、全会一致でシーズン移行が決まったことが明かされた。なぜ今回足並みを揃えてシーズン以降を正式に決定できたのか。記者会見で問われた野々村芳和チェアマンは、「フットボールファーストということを考えた時に、パフォーマンスが下がってしまうのは絶対に良くないという思いを持つ人が多かったこと。目標が今までは国内のコンペティションでどう戦っていくかでしたが、これは30年前にできたばかりなので仕方がない。国内でどう勝つかを徹底してやってきたなかで、選手の意識も変わって、世界を意識せざるを得なくなったことが一番大きなところだったのかなと思います」と、答えた。

 現行のJリーグの「春秋制」では、2月の開幕直後から3月をピークに、徐々にコンディションを落としていき、シーズン終盤に少しコンディションが上がるというデータが出ているという。一方、「秋春制」の欧州5大リーグは8月の開幕時のコンディションが最低状態であり、そこから徐々に上がっていき、1月がピークになってシーズン終盤に向けて徐々に落ちていく形になっているという。Jリーグでは、コンディションがピークになる予定の1月、2月はリーグ戦を中断する予定になっているが、競技力の向上という点では大きな影響を及ぼす可能性がある。

「気候変動の問題」も要因

 また、野々村チェアマンは「気候変動の問題」についても、一致団結した要因に挙げた。

「昨年までの10年間で、大雨などの理由で中止になった試合数は最初の5年間は14試合でした。その後の5年間は58試合に増えています。気候変動が多くあるなか、最も試合が雨などで流れているのは7月、8月、9月です。今のシーズンで8月、9月に(試合が)流れると、(リーグ戦は)12月の第1週で終わるので、それよりうしろには当然いけません。これからどんな気候変動があるか、なかなか読めないなかで、シーズンを成立させるうえでも、8月スタートのシーズンだった場合は、この5年間のように8月、9月に試合が中止になることがあっても、うしろに逃がす日程はかなりあったりします。それに加えて夏場のパフォーマンス。夏も今より暑くなるかもしれない。気温とパフォーマンスの低下は、完全に相関関係があるので。そうしたことを含めてシーズンを変えていくということ。世界と戦う上で、日本はそこに手をつけないといけないという流れになったのではないかなと思います」

 野々村チェアマンは、冒頭に「10か月以上、実行委員だけではなく、各クラブのスタッフも考えると500人くらいの人たちを交えて、これからの日本のサッカー、Jリーグをどういう方向にもっていこうかと話しました。『世界と戦う舞台にJリーグを変えていこう』ということを10か月かけて話しました。そのなかで、シーズンを変えることが必要じゃないかということで、今回のシーズン以降の話に至りました」と語った。

 リーグの開催時期を「秋春制」にすることが目的なのではなく、競技力やリーグを発展させるために必要な手段を問い、結果として「秋春制」への変更が必要なことを理解してもらうことに成功した。シーズン移行に着手することで、この先も新たな問題や課題が出てくるだろう。リーグとJリーグ60クラブが目標をぶらさずに歩み続けられるかが、2026-27シーズンからの新たなJリーグのスタートの鍵になりそうだ。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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