セルティック凱旋を果たした中村俊輔の真意 「パワースポット」への巡礼

いまだ俊輔を愛するサポーター「彼の穴が埋まらない」「今日の試合に出て欲しい」

 

 いわば、今回のセルティック訪問は、俊輔にとっての巡礼だ。その巡礼の目的は、あくまで俊輔本人が望むスタンダードを保った上で、来季も現役を続けることにある。

 普通の人生であれば、36歳はまだまだ若年だ。これからという年齢である。しかしプロのサッカー選手にとってはキャリアの終盤。残酷にもこの若さで“老い”を実感させられるのだ。

 もちろん、俊輔ほどの才能と技術があれば、そう簡単に衰えることはない。けれども、プロのサッカーの試合に出場するための“最高の体調”を保つことは日々難しくなる。引退はその最高を保つための鍛錬ができなくなることで訪れるのだろう。

 そういう年齢を迎えて、俊輔はその日、現役を退く日を一日でも遅らせようとしている。肉体の衰えを気力で補おうとしているのだ。

そのために、試行錯誤する。どこに行けば、来季に向けたパワーを充電できるのか。その熟慮の結果、NO.10はグラスゴーにやって来たのだ。

 そんな中村俊輔を、大勢のセルティック・サポーターたちが心待ちしていた。試合前、スタジアムの正面玄関前で数人のサポーターと話をした。

 話しかけた6人のサポーター全員が、俊輔の凱旋を知っていた。選手として、俊輔をどう思うとたずねると、彼らの口からは真っ先に「gifted」「talented」という言葉が飛び出し、その天賦の才能を称えた。

 彼らの声をここで簡単に紹介しよう。

「フリーキックの神様だよ。彼が抜けてからその穴が全く埋まらない」(アレスター)

「(2006年欧州CLグループ戦での)マンチェスター・U戦のフリーキック2本が印象に残っている。最初アウェイで決めて、ホームでも決めた。1本だけならまぐれということもあるが、2本目も決めた。それであのFKがまぎれもなく彼の能力だということが分かった」(リチャード)

「天分に恵まれた選手。確かに運動量がない、守らないという意見もあったが、それで過小評価されているとも思う。彼のボールを蹴る能力は本当に素晴らしかった」(マーティン)

「NAKAのプレーが本当に恋しい。今日はファンにとって特別の日になる。ハーフタイムが楽しみだ」(スティーブ)

「J1でもまだ活躍していると聞いている。フィットしているはずだから、今日の試合に出て欲しい」(エド)

 それぞれのコメントに、俊輔を知り尽くし、今も愛し続けている彼らの思いが詰まっていた。

 ハーフタイムでは観客全員がスタンディング・オベーションで俊輔を迎えた。そして総立ちのまま、ピッチの中央に立つ俊輔と、大スクリーンに映し出されたかつての栄光のゴールシーンを一緒に見た。

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