浦和、アル・ヒラルと3度目のACL決勝戦へ “アジア覇権争い”の歴史から紐解く勝利への道筋

2017年大会で優勝した浦和【写真:Getty Images】
2017年大会で優勝した浦和【写真:Getty Images】

ACL決勝で2017年と19年に対戦、両クラブとも2回の優勝経験を誇る

 J1浦和レッズは3回目のアジア制覇を目指し、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝を戦う。4月29日にはアウェー、5月6日にはホームでの試合を行うが、その対戦相手がアジア制覇へ最大のライバルとなっているアル・ヒラル(サウジアラビア)だ。

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 このACLという大会は、2002年に統合刷新されて生まれ変わった。その大会で浦和とアル・ヒラルは2回優勝で最多タイの記録に含まれる2チームだ。つまり、この決勝戦で勝利したチームは、ACLの優勝回数で単独首位に立つ。そして、このカードが実現するのは2017年、19年に続いて3回目。リニューアル後のACLで同じ決勝カードが複数回行われているのは、この浦和とアル・ヒラルの対戦だけだ。

 17年は浦和が制した。当時、12年からチームを率いていたミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下で攻撃的なサッカーを展開していた浦和は、リーグ戦での不振からラウンド16と準々決勝の間に監督が交代。堀孝史監督に率いられて決勝戦に臨んだ。3バックで戦っていたチームは4バックになり、より守備からチームを組み立てるようになった。初戦のアウェーでは押し込まれる時間も長くなったが、FWラファエル・シルバがドリブル突破してゴール前に入れると、パスは通らなかったがそのまま相手のクリアを足に当てて押し込むような先制ゴール。同点ゴールこそ許したが、貴重なアウェーゴールと引き分けでホームに戻った。

 そして第2戦では、堀監督の戦術的な調整もあって初戦で苦しんだ相手のサイド攻撃にも対策を持ってプレー。それほど危険な場面を迎えることなく進めたゲームでは、後半に焦りの隠せない相手が退場者も出した。そして後半終了間際、MF武藤雄樹の縦パスに相手との駆け引きで抜け出したシルバが強烈な右足シュートを決め、ホームでのアジア制覇を成し遂げた。

19年の2度目の対戦では、リーグ戦で迷走していた浦和が順当な敗戦

 しかし、19年はアル・ヒラルに力の差を見せつけられた。17年の優勝に導いた堀監督は翌年の春には成績不振で契約解除。大槻毅暫定監督の時期を経てオズワルド・オリヴェイラ監督が天皇杯の優勝に導き、19年ACLへの出場権を手にした。しかし、この19年も成績不振でオリヴェイラ監督を5月末に契約解除。大槻監督が正式な監督に就任し、リーグ戦では残留争いに巻き込まれるなかでACLは決勝まで進んだ。このチームの歩みを列挙しても分かるように、ペトロヴィッチ監督の作ったチームを微調整したレベルの17年とは違い、もはや崩壊寸前で最後の力を振り絞った決勝進出だった。

 再びアウェーが初戦だったが、まさにハーフコートゲームと呼ぶべき状況で押し込まれた。それでも、このゲームで出場停止のGK西川周作に代わって出場したGK福島春樹がファインセーブを連発し、傷跡は最小限とも言える0-1の敗戦でホームに戻った。

 埼玉スタジアムでの第2戦に希望を残した浦和だったが、チーム力の差は全く隠せないところまで来ていた。1点を追い、さらにホームで戦うのは浦和のはずが攻撃の回数は圧倒的にアル・ヒラルの方が多い展開で、後半29分には先制ゴールを許してしまう。逆転には3点が必要になったが、猛攻に出るような時間帯さえ作らせてもらえず。終了間際には追加点も奪われて敗戦。当時の主力DFだった元日本代表の槙野智章は「すごく悔しいですよ」とはしたものの、「僕たちも出し切りました。もう少し自分たちにチャンスがあるとか、五分五分とか僅差の試合だったら、もっと悔しかったと思いますけど、個人的にはある程度整理がついたなかでの表彰式でした」と話すほど、順当な敗戦だった。

 浦和はこのシーズンの末に、翌年からの「3年計画」を打ち出してチームを解体的に刷新して出直してきた。20年は大槻監督が続投し、「時計の針をゼロに近づける作業」を担った。翌21年からは、契約期間の切れ目に当たる選手を次々と入れ替えていくことになり、リカルド・ロドリゲス監督の就任初年度に天皇杯を優勝。今回のACLへ出場権を得た。そして22年はACLを勝ち抜きながらもリーグ戦では苦戦。ロドリゲス監督が退任し、今季から指揮を執るマチェイ・スコルジャ監督の下でこの決勝戦に臨む。リーグ戦で開幕2連敗のあとは、公式戦11試合無敗でチームは安定感を見せている。

 22年大会も優勝してクラブ・ワールドカップ(W杯)で準優勝に輝くなど、充実の時期を続けるアル・ヒラルと、大きな立て直し期間を経て再びアジアの頂点に臨む浦和の第3ラウンド。間違いなく近年のアジアで覇権を争う東西地区の代表クラブと言える両者の戦いは、名勝負の予感を漂わせている。

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