鈴木優磨はなぜ代表に呼ばれない? “謙虚な姿勢とやんちゃな姿”…森保監督との関係性を考察

鹿島FW鈴木優磨【写真:Getty Images】
鹿島FW鈴木優磨【写真:Getty Images】

【識者コラム】過去SNS発言でも物議…2018年以来、代表招集のない鹿島FW鈴木に注目

 続投が決まった日本代表の森保一監督は、新始動に先立つメンバー発表を3月15日に予定している。「FOOTBALL ZONE」でも第2次森保ジャパンの特集を組むなか、J1鹿島アントラーズFW鈴木優磨の立ち位置について識者が見解を述べた。(文=森 雅史)

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 第2次森保ジャパンの最初のメンバーが15日に発表されることになった。2026年ワールドカップ(W杯)に向けてどんなメンバー選考になるのか期待が高まる一方、能力はありながら入らないだろうと思われている選手もいる。

 それは鹿島アントラーズの鈴木だ。カタールW杯前には何度も待望論が出ていたが、ドーハで堂安律、浅野拓磨、前田大然らがゴールを挙げて森保一監督のチョイスが間違っていなかったことが証明され、大会後に三笘薫、上田綺世、町野修斗が調子を上げていることから話題から消えてしまった。

 町野は23歳、堂安と上田が24歳、前田と三笘は25歳であることを考えると、26歳の鈴木を4年後のW杯に向けて招集するかどうか、年齢的には難しいチョイスかもしれない。だが、鈴木の能力を考えるとこのまま青いユニフォームを着たプレーが見られないのは残念と言えるだろう。

 2015年、鹿島アントラーズのメンバーとして19歳でJリーグデビューするとその試合で初得点を決める。2018年には公式戦11ゴールを挙げて2019年からはベルギーに移籍。同国1部シント=トロイデンでは2020-21シーズンに公式戦17ゴールを記録するなど活躍し、2022年、鹿島に復帰した。

 日本に戻ってからは自ら決定機をつくるだけではなく、周囲をさらに生かせるようになっており、また試合の流れを読む力も抜群でゲームを俯瞰して見ている。プレーは鹿島の中でも頭抜けていると言えるだろう。

 そんな鈴木が日本代表に入らない。森保監督が呼ばないのか、あるいは鈴木が拒んでいるのかは分からないが、この状況はお互いにとって良くないのではないか。

 最初に森保監督と鈴木の関係が垣間見えたのは2020年9月23日、鈴木のツイートだった(現在は削除)。「イライラする部分が好きじゃない? てめーなに様だよ」「だったら呼ぶんじゃねーよ」と連続投稿したのだ。そして10月1日、発表されたヨーロッパ遠征のメンバーに鈴木の名前はなかった。

 このツイートからだけ推測すると、森保監督が鈴木に「招集しようと思うけれど、君のイライラする部分が好きじゃない」と言って鈴木がそれに反発した、と考えられるだろう。

 まず前提として鈴木は「イライラする」のか。確かに試合中はオラついているときもある。今シーズンも京都サンガF.C.戦(開幕節/2-0)でブーイングを受けると京都サポーターを煽ったりもした。

 だがいろいろな場面で鈴木を見ると、確かに「やんちゃ」な性格ではあるがピッチ内では演技も加わっているように見える。闘争心をことさら強調して、それを味方に伝えようとしているように思えるのだ。鹿島には精神的支柱として小笠原満男氏のように、味方を引き締め、諦めさせない存在がいた。今、鈴木がその役割を果たそうとしているのではないか。

 試合後の取材現場で鈴木に会うと、まだ興奮冷めやらぬ選手もいるなかで、非常に丁寧に言葉を選びつつ答えている。謙虚な言葉も忘れない。また試合中も相手選手が負傷で倒れると、さっと手を差し出して助け起こす優しさを見せることもある。決して「尖り」まくった人間ではないのだ。

過去召集の際に森保監督とコミュニケーションが取れていれば…

 一方で、はたして森保監督が招集する選手に「イライラする部分が好きじゃない」と言うだろうか? 吉田麻也に「ここまで選手ファーストで考えてくれる監督はいないんじゃないか」と評される人物が、わざわざこんな言葉を呼ぶ選手に伝えるとは思えない。

 常に丁寧に会話をしようとする森保監督ならば「好きじゃない」と言うのではなく「あの場面はどうしたのか」と聞くのではないだろうか。鈴木が怒ったセリフは、森保監督が言ったとするとあまりにいつものイメージとはかけ離れている。

 また監督が直接、選手に招集の可能性を伝えるのか。もし自身にとって初招集となるかもしれない相手に電話なりで「招集するかもしれない」と話し、その後選考しなければ最初から関係がこじれると考えるのではないだろうか。

 そう考えると、鈴木に招集の可能性を人づてに伝えてもらった際、その人物が「森保監督はイライラする部分が好きじゃないと言っていた」と付け加えたのではないかと、そう思えてしまう。その最初のボタンの掛け違いが尾を引いているように思えてならない。

 森保監督が鈴木を評価していることは間違いないだろう。2018年に国際親善試合のメンバーとして招集しているのだ。その時の鈴木は、現地時間11月10日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝で負った怪我のために辞退した。もしそのとき、顔合わせでも出来ていればお互いの人物像をより深く知ることができて、信頼関係が築けたのだろう。

 森保監督はこれまでに視察で何度もカシマスタジアムに訪れているが、はたして鈴木と面会はできているのだろうか。超えられなかったベスト16の壁を突破するためにも、参加国が増えてより厳しくなってきたベスト8への道のためにも、日本の総力を結集するためにぜひ鈴木の名前をリストに加えてほしいし、鈴木には代表に入ってほしいと思う。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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