【W杯】アディショナルタイム増加で選手への負荷は? 元主審・家本氏が今後を展望「交代枠の変更や戦術の変貌も…」

アディショナルタイムを正確に測れば「選手へ負荷がかかるのは当然」

 今後このアディショナルタイムの長さが浸透していくか家本氏に問うと「今大会次第でしょうね」とカタールW杯での採用で今後の採用が検討されると推測する。「それぞれの国や地域における歴史や文化、価値観なども絡んでくる話なので、時間が正確に追加されることを組織がどう考えるか、サポーターや選手たちがどう考えるか次第だと思います」と展開を予想した。

 また、現状試合中に追加時間を知っているのは審判のみで、「多くの人に可視化されていないのはアンフェア」と家本氏は主張する。今後、今大会のアディショナルタイムが定着するなら「空費された時間がいったいどれくらいあるのかは試合中からオープンになるほうがいいです。それによってチームの戦い方、戦術にも影響が出てきますし、選手も応援する人も安心してサッカーを楽しむことができるからです」と持論を述べた。

 家本氏は、長くなったアディショナルタイムが及ぼす選手への影響も考察し「サッカーは90分の試合ですが、実際はインプレ―なのは50から60分強だと言われています。サッカーは精神的にも肉体的にも非常に強度が高い競技なので、正確に時間を追加していくとその分選手へ負荷がかかるのは逆に懸念点でもあります」と負担増加を危惧。「VARなども入ってきてサッカーも変化していますし、今後もさらに変わっていくと思います」とテクノロジーの導入で変わってきているサッカー界を見据えつつ、「プレー時間が伸びるのは利点もあるので、今後の展開次第では交代枠や競技規則の変更、戦術の変容もあるかもしれません」とさらなる時代の遷移の可能性を予想していた。

(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)



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家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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