久保建英の数字と変化が示す“ソシエダ成功”の要因と代償は? 怪我人続出も相手を窒息させる新たな武器が機能

久保建英が所属するレアル・ソシエダの本拠地レアレ・アレーナ【写真:高橋智行】
久保建英が所属するレアル・ソシエダの本拠地レアレ・アレーナ【写真:高橋智行】

成功の秘訣はハイプレス、一方で最もファウルの多いチームに

 このように難しい状態ながらも、ソシエダはここまで公式戦16試合12勝1分3敗と絶好調。UEFAヨーロッパリーグ(EL)は5連勝を達成してすでにグループステージ突破を決め、ラ・リーガではUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の4位につけている。

 バジャドリード戦に敗れ、公式戦連勝が8、ラ・リーガ連勝が5でストップしたが、敗北を喫したのはそのほか、FCバルセロナ戦とヘタフェ戦のみ。アトレティコ・マドリードと引き分け、マンチェスター・ユナイテッドに敵地で勝利していることを考えると、ここまでの歩みは“素晴らしい”の一言に尽きる。

 タイトなスケジュールをこなすなか、怪我人続出のソシエダがこのような成功を収めている要因はなんなのだろうか?

 ポゼッションサッカーをベースに戦うイマノル・アルグアシル監督はここ2年、特に守備に磨きをかけている。昨季はアレックス・レミーロやル・ノルマンを中心に堅固な守備組織を構築して、エースのオヤルサバル不在による得点力不足を補い、3季連続のEL出場権を獲得した。それに今季は相手を窒息させるような前線からの激しいプレスを新たな武器として加えている。

“攻撃は最大の防御”とも言われるとおり、守備陣だけでなく、攻撃陣も積極的に前から守備をやり、ピッチ全体でハイプレスをかけていることが成功の秘訣の1つと言えるだろう。例えばラ・リーガ第6節エスパニョール戦では、久保が前線から猛然とGKにプレスをかけてボールをカットしたことが先制点につながっていた。

 またソシエダはラ・リーガ屈指のボールリカバリーに優れたチームでもある。敵陣でボールを失ったあと、即座にそれを実行して数多く成功させ、素早く攻撃につなげていることも、勝ち星を増やし続けている要因と考えられる。

 しかし、このようにインテンシティーの高いプレーをしている代償として、ソシエダはラ・リーガで最もファウルの多いチームになっている。第11節終了時のファウル数は194回(1試合平均17.6回)で、176回(16.0回)のバレンシア、175回(15.9回)のマジョルカを上回り20チーム中トップになっている。しかし、ボールを奪うためにあれだけ厳しく当たっているため、致し方ないことかもしれない。一方、最少は唯一二桁台のレアル・マドリードで99回(9.0回)。

 選手個人でも、ブライス・メンデスが30回(2位)、ミケル・メリーノが26回(5位)と、中盤の主軸2人がラ・リーガのファウル数ランキングで上位につけている。最多は32回のガビ(バルセロナ)となっている。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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