“大国”ドイツになぜ異変? FWミュラーが自虐コメント…日本と対戦のW杯本大会へ不安増幅のワケ

直近2試合で1分1敗のドイツ代表【写真:ロイター】
直近2試合で1分1敗のドイツ代表【写真:ロイター】

【ドイツ発コラム】9月のUEFAネーションズリーグ2連戦でまさかの未勝利に

 ドイツ代表の調子がおかしい。

 6月シリーズではチームの課題を解決しながら試合を重ね、イタリアには5-2と圧勝。確かな方向性と手応えとともに9月のUEFAネーションズリーグを迎えたわけだが、ハンガリーに0-1で敗れ、イングランドとは3-3の引き分けに終わった。

 イングランド戦では後半7分、MFイルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・シティ)のPK、同22分にはMFカイ・ハフェルツ(チェルシー)のファインゴールで2点リードを奪いながら、同26分からの4分間で一気に同点に追い付かれてしまった。それだけではなく、同38分にはPKを献上。FWハリー・ケイン(トッテナム)が豪快に蹴りこみ逆転を許してしまう。同42分にGKのミスからハフェルツがこの日2点目となるゴールを決め、何とか引き分けで終えることはできたが、後味の悪い試合になったことは否めない。

 ハンジ・フリック監督は試合後、「後半20分間は本当にいいサッカーができていたし、順当にリードすることができた。1点失った後、ガクッときてしまったが、あってはならないこと。失点は個々のミスから生まれたが、それぞれの選手は自分のポジションで何をしなければならないかを知らなければならない。攻撃的なサイドプレーヤーはボール非保持の時にもっとやることがある。それがあったら両失点ともなかった。そこにもっと取り組んでいかなければならない」と厳しい表情で語っていた。

 ハンガリー戦で「これまで最悪の45分間」(フリック監督)を経験した後だけに、リアクションが求められる試合だった。永遠のライバルとされるイングランドとの対戦。アウェーでウェンブリースタジアム。モチベーションを高めるのに最適な環境だったはずだ。

「あの前半の出来は私の目を見開かせてくれた。実験は終わりだ」とハンガリー戦後にフリック監督は鋭くコメントしていたし、イングランド戦はいいプレーも増えてはいた。ただ、チームとしての機能美を見せていたかといわれると首をかしげざるを得ないシーンが多かったのも確かだ。

 これまで主軸だった選手が不振なのは気になるところ。FWティモ・ベルナー(RBライプツィヒ)はとにかく、何をやってもうまくいかない。ミスをするたびにドイツ人メディアが「何をやっているんだ」と叫んでは頭を抱える。MFセルジュ・ニャブリ(バイエルン・ミュンヘン)も絶不調。ボールが収まらず、守備でも振り回されてしまう。

 フリック監督は選手への信頼を何より大事にする指揮官だ。MFレロイ・サネ(バイエルン)が昨季、完全にフォームを見失った時も辛抱強く起用して、そこから少しずつ復調へと向かったという実績もある。指導者として適切な対処なのは間違いない。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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