鹿島の決断は“常勝軍団らしさ”の証!? 岩政新監督に期待される鈴木優磨“覚醒”への環境整備

鹿島はシーズン途中に監督を変えると成績情報のデータ有

 まずは少し視点を変えて、過去の鹿島のシーズン途中での監督交代を振り返ってみる。なお、対象データは順位表のデータが節ごとに残っている1999年以降のリーグ戦とした。

1999年:ゼ・マリオ(6勝1分11敗)/関塚隆(0勝0分1敗)/ジーコ(8勝0分3敗)
2015年:トニーニョ・セレーゾ(7勝5分8敗)/石井正忠(11勝0分3敗)
2017年:石井正忠(7勝0分5敗)/大岩剛(16勝3分3敗)
2021年・ザーゴ(2勝2分4敗)/相馬直樹(19勝4分7敗)

 これまでの鹿島の歴史の中で、シーズン途中から引き継いだ監督は必ずチームを浮上させている。それだけ鹿島は「監督交代のタイミング」と「誰を後継者に指名するか」というノウハウは持っていると言えるだろう。

 監督交代の決断が不思議に見えたことはこれまでも何度もあった。例えば、これまで世代交代を3回にわたって成功させたトニーニョ・セレーゾ監督が2015年に解任された時はセカンドステージでまだ第3節、順位は11位で、決して降格がちらついた段階ではなかった。

 2017年の石井監督が交代した時も、まだ勝ち越している状態で、しかも前年度は2009年以来のリーグ制覇をなし遂げている。つまり鹿島のこれまでの交代のさせ方は、決して降格圏に近づいたから、というわけではない。

 実はこのトニーニョ・セレーゾ監督と石井監督の交代のあと、鹿島のチーム関係者に「功労者を交代させたのはなぜか?」と聞いた。どちらの時も「鹿島は優勝しなければいけないから」と、今回の監督交代と同じ答えが返ってきた。

 では鹿島は、少し成績が悪くなると監督を代えてきたかというとそうではない。2007年、オズワルド・オリヴェイラ監督が就任した時の出だしは最悪だったのだ。第5節を終えて3分2敗、かつてないリーグ序盤戦となった。それでも監督の力を評価していたクラブは続投させ、結果的にはその年から鹿島は3連覇している。

 つまり、監督交代のノウハウを鹿島は持っている、という前提で今回の契約解除を考えなければいけないだろう。外部には見えない点があるのだろうと推測するしかない。

 しかも、ヴァイラー監督が来日するまで指揮を執り、鹿島OBでチームの実情も分かる岩政新監督は、もっとも「安パイ」的な人材で、そんな人物がクラブにいる間にスイッチするというのは妥当とも言える。

 ただ、おそらく多くの人はそんな鹿島のチーム運営について評価をしているだろう。それでも今回の交代劇が不安をかき立ててしまうのはなぜか。

森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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