川崎の大敗、湘南の大勝は「偶発的ではない」 トップと最下位の極端な格差なし、J1で優位性を発揮する2つのポイントは?
【識者コラム】等々力での神奈川ダービーは17位湘南が首位の川崎に4-0圧勝
J1リーグ第15節、等々力での神奈川ダービーは、空前の大混戦を象徴する試合となった。
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キックオフ前の時点では、川崎フロンターレが首位で湘南ベルマーレが17位。湘南は13節時点では最下位に低迷し、前節同勝ち点の神戸に競り勝って脱出したばかりだった。
だが結果は17位の湘南が、首位の川崎に4-0で快勝した。湘南は序盤からハイプレスでゲームを支配し、逆にホームの川崎が相手の背後を突いてカウンターを狙う展開で推移。前半はスコアレスで終えたが、後半開始5分に湘南が「トレーニングから確認を繰り返して来た」(湘南FW町野修斗)セットプレーで均衡を破ると、11分間で一気に4ゴールを畳みかけた。
湘南サイドは「今の川崎は絶対王者ではない」という意識を共有して臨んだというが、確かに試合内容を見れば偶発的な大勝ではない。5-3-2と一見、後ろ重心の湘南だが、前からのハードワークでボールホルダーに圧力をかけているので、後方の選手たちが狙いを持ってインターセプトに出て、そのままの勢いで攻撃へと転じている。
また大半が迷いなく少ないタッチでパスを繋げ、オートマティズムが浸透しているのと同時に、個々が相手の出方を察知しながら裏を取る判断も織り込まれている。山口智監督は「強みは守備で、課題は得点」と見ていたそうだが、同じフォーメーションの柏レイソルと比べても、むしろ攻撃が整理され崩しのバリュエーションが豊富な印象だ。いずれにしても、これだけのパフォーマンスが続けられれば、降格圏に低迷するチームではない。
一方で今年の川崎は、ここまでリーグ戦で喫した3つの敗戦すべてで大量4失点をしている。またその相手は、いずれも平均走行距離で上位を占める横浜F・マリノス(15節終了時点で2位)、湘南(同3位)、セレッソ大阪(同5位)である。逆に攻撃では「毎試合3ゴールを目標に掲げている」(川崎MF脇坂泰斗)のに、ノルマを達成した試合はなく最高でも2点しか取れていない。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。