エースFW大迫“不要論”は妥当なのか… 森保ジャパンに蔓延る“1トップ問題”、有効な解決策を検証

大迫に代わるセンターフォワードは?【写真:(C) JFA】
大迫に代わるセンターフォワードは?【写真:(C) JFA】

【識者コラム】W杯本大会に向け、日本の課題“1トップ”に焦点

 カタール・ワールドカップ(W杯)本大会を今秋に控えるなか、森保ジャパンの“1トップ問題”は依然、課題として蔓延っている。日本のセンターフォワードは長らくエースの座に鎮座してきた大迫勇也(ヴィッセル神戸)に託すべきか、あるいは、再考すべきなのか――。アジア最終予選で志向してきた直近のスタイル、さらに6月シリーズの招集メンバーを踏まえ、改めてその解決策を探る。

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 結論から言えば、日本はいわゆる前線のポストプレーヤーに依存しないスタイルに舵を切っていると考えられる。もちろん“大迫不要論”といった安っぽい見解を展開することはないが、少なくとも最終予選の終盤戦で、すでに大迫が不在の状況で結果を出したことも森保監督にそうした判断をさせやすくなっているのは確かだろう。

 それは大迫が招集外だったラスト2試合もそうだが、それ以前に90分ベースの起用法から変化は出ていた。先発した年明けの中国戦、サウジアラビア戦も前田大然(セルティック)に途中交代しており、前線にスピードのある伊東純也(ヘンク)、浅野拓磨(ボーフム)、前田を並べる別のオーガナイズが機能していた。

 交代枠に関しては必ずしも大迫個人の問題ではなく、やはりコロナ禍で5人交代制が定着したことにより、多くの交代カードを切りやすくなったことも影響しているはずだが、そうした状況も踏まえながら、大迫がピッチにいないシチュエーションは段階的に進行してきたわけだ。

 大迫に代わる前線の主力候補に上田綺世(鹿島アントラーズ)が上がっているのは周知の事実。ただし、182センチという体格は通じるものの、プレースタイルはかなり異なる。大迫と前田ほどの違いはないが、上田も基本は裏抜けや一瞬の動き出しを武器としながら、必要に応じてポストプレーもこなせる。しかも、ヘッドやワンタッチの落としが多く、ボールをおさめてタメを作るというタイプではない。

“万能型”と呼ぶには裏抜けの度合いが強い、生粋のストライカーだ。どちらかと言えば森保ジャパンでは未招集の鈴木優磨(鹿島アントラーズ)のほうが、大迫に近い仕事はできる。特にポストプレーに関しては日本人FWとしては特筆に値するものがある。

 彼が国内組ベースとされるE-1選手権で招集されるかはさておき、上田をはじめ前田、浅野、怪我から復帰した古橋亨悟(セルティック)と、6月シリーズのFW陣を見ても、ターゲットマンありきでないことは分かる。

 そうした働きをFWに期待するのであれば林大地(シント=トロイデン)やオナイウ阿道(トゥールーズ)を優先的に招集するだろう。彼らも所属クラブで目覚しい結果を残したわけではないが、決して悪いプレーではないからだ。彼らも森保ジャパン招集歴があり、今後の活躍次第でチャンスはあると見るが、現場は今回選ばれたFW陣より1つ後ろにいると考えるべきだろう。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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