フランクフルト、悲願のEL優勝の舞台裏 高原直泰の激励、出血、涙…「1人のヒーローなんていない。僕らみんながヒーローだ」

EL優勝を果たしたフランクフルト【写真:ロイター】
EL優勝を果たしたフランクフルト【写真:ロイター】

【ドイツ発コラム】ELのフランクフルトはドイツ全土から応援される存在に

 元日本代表MF長谷部誠と日本代表MF鎌田大地がプレーするドイツ1部フランクフルトが悲願となるヨーロッパリーグ(EL)優勝を果たした。

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 長い道のりだった。何度も苦しい結果に打ちのめされた。2部降格の危機におびえる日々だってあったのだ。試合後のインタビューでベテランDFティモティー・チャンドラーが涙を浮かばせながら叫んでいたのが何より印象的だった。

「残留を懸けた入れ替え戦からヨーロッパリーグ優勝まで来たんだ。これ以上すごいことがあるか? 僕らがなしえたことはものすごいよ」

 会長のペーター・フィッシャーは感極まった。

「今日は喜んで、祝い合う。そしてこのトロフィーをフランクフルトに持ち帰る。町と地域のみんなに見せたいんだ。クラブの歴史上最高の瞬間だった。まさに最高の時だった。これ以上ないほど誇りに思っている」

 オリバー・グラスナー監督は何度ガッツポーズを繰り返しただろう。何度、雄叫びを上げたことだろう。コーチングゾーンでアクティブに戦い続けていた。

「ヨーロッパリーグ13試合で無敗での優勝。信じられないことだ。言葉がないよ。みんなが最後まで本当に全力で戦ってくれた。最大の賛辞を贈る」

 フランクフルトだけの話ではない。ELを戦うフランクフルトはドイツ全土から応援される存在になっている。どんなアウェー戦でも大勢のファンが駆けつけ、スタジアムを自分たちの色にしてしまう。FCバルセロナ戦では敵地カンプ・ノウをホームと見間違わんばかりの景色に変えてしまった。

 決勝のチケットにも応募が殺到した。フィッシャー会長は「チケットを求めて応募してきたのは20万人以上になる。19万人ものファンがスタジアムに入れないことになるというのは受け入れがたい」と話していたが、チケットが手に入ろうとも入らなくても構わない。数多くのフランクフルトファンは決勝の地セビリアへと飛んだのだ。

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで、さまざまなレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、16-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで精力的に活動している。

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