昨季15位→上位躍進 J1柏が開幕前の低評価を覆して“V字回復”を果たしたワケ

上位戦線に食い込む快進撃を見せている柏【写真:小林 靖】
上位戦線に食い込む快進撃を見せている柏【写真:小林 靖】

【J番記者コラム】充実のキャンプでネルシーニョ監督が要求するスタイルが浸透

 柏レイソルは注目されたJ1リーグ第8節の上位対決で王者・川崎フロンターレの底力に屈したものの、上位戦線に食い込む快進撃を見せている。昨季は15位と辛くも残留を果たし、開幕前の低評価を考えれば、驚くべき躍進である。

 ネルシーニョ監督も選手たちも、口を揃えて「昨年とやっていることは変わらない」と言う。ただ、そのなかで、ネルシーニョ監督が昨年との決定的な違いとして明言するのが準備期間だ。

「昨年はキャンプで思うような準備ができなかった。そのなかでシーズンが開幕し、フィジカルのコンディションが整わない期間がしばらく続いた。怪我人が出たり、予想外のアクシデントに見舞われる期間が続き、うまく準備できなかったことが大きかった」(ネルシーニョ監督)

 昨年の柏は、1月4日にルヴァンカップ決勝を戦い、そこから約1か月間のオフを設けたことによってシーズン始動が2月上旬にまでずれ込み、開幕まで3週間程度の準備期間しかなかった。

 FWオルンガ(現アル・ドゥハイル)という規格外のストライカーを失ったチームにとって、再構築できない準備期間の短さは致命的であり、しかも多数の怪我人や新型コロナウィルス感染症の陽性者を出すなど不測の事態にも見舞われ、序盤から大きく出遅れたチームは結局、シーズンを通じて立て直すことができなかった。

 一方で、今年は1月中旬の始動で十分な準備期間を設け、キャンプではFW武藤雄樹の負傷離脱こそあったが、その他の選手たちに大きな怪我人は出なかった。10番を背負うMFマテウス・サヴィオが、「キャンプでフィジカルコンディションを上げ、監督がピッチの上でどういうプレーをすべきかを明確にしてくれた」と振り返るとおり、ネルシーニョ監督は要求する高いインテンシティーをベースにしたスタイルを浸透させ、充実のキャンプを送った。

 開幕前、柏は多くの有識者から降格候補と予想されていた。これは昨季の15位という成績に加え、シーズンオフにおける主力選手たちの移籍が理由にあると推測される。特に、攻撃陣に関しては昨季と比べ大幅にメンバーが入れ替わったが、むしろこの入れ替えは凶とならず、柏にとって吉と出た。

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