塩谷の肩の力を抜いたキャプテン本田の言葉 「できていることを100とすれば、そのちょっと下でいい」

デビュー戦直前の会話

 日本代表MF本田圭佑(ACミラン)が、キャプテンとして影ながらチームを支えていることが分かった。10日のジャマイカ戦の安定したプレーでDF塩谷司(広島)は、アギーレ•ジャパンのディフェンスラインの主軸候補に急浮上した。その活躍の裏には、本田の細やかな気遣いがあった。
 11日夜にシンガポール入りし、12日午前、チームは気温30度を超える暑さの中、約1時間の練習を行った。守備時の連動の練習以外は負荷の軽いメニューとなる中、ひときわ目立つ金髪の2人がピッチ上で会話を重ねていた。10日のジャマイカ戦でデビューした塩谷と本田だった。
 塩谷は本田との会話をこう振り返った。
 「海外の話とかですね。生活とか」と言うと、2日前のことを思い出して「(デビュー戦となったジャマイカ戦の)試合前にも話しかけてきてくれて、それで緊張がなくなった。リラックスできた」と続けた。
 サウサンプトンDF吉田麻也の負傷欠場で、巡ってきたジャマイカ戦での先発のチャンス。塩谷は緊張するはずの初戦で、ピッチ上で最も輝きを放った。先輩のDF森重真人のカバーリングや、前線の動きだしを待ちながらスペースにロングパスを送り込んだ場面もあった。長旅でコンディション不良のジャマイカながら、堂々とした振る舞いを見せた。
「塩谷は完璧だった」
 アギーレ監督もそう激賞した、ジャマイカ戦開始前、本田は塩谷にこう語りかけたという。
「普段持っていること、できていることを100とすれば、きょうはそのもうちょっと下でもいい。硬くならずに普段やっていることをやればいいから」
 サッカーはメンタルのスポーツ。試合前のミーティングで勝利への執念をひたすらたぎらせたというメキシコ人指揮官の檄を聞けば、誰でも力みが生まれる。9月のアギーレ監督就任後の2試合は、守備陣のミスで白星を手にすることができなかった経緯もある。代表デビュー戦の塩谷ならなおさら気負い、平常心を保つことは難しかったはずだ。ミランでフィリッポ・インザーギ新監督から今季細やかなサポートを受け、再生した本田の気遣いで塩谷は吹っ切れたという。
「それでちょっと気が楽になりましたね」
 笑顔を見せた塩谷はジャマイカ戦でも本田に積極的に縦パスを狙った。
「圭佑さんに入れていけば攻撃になるし、パスを出していきたい」
 14日の王国ブラジルとの一戦は、塩谷にとってはいきなりの試練となるが、失うものはない。今度は、右サイドでゴールチャンスを待つ本田に後方支援するつもりだ。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

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