モウリーニョの罠にはまったベンゲル 今季優勝にかけるモウリーニョの執念

モウリーニョがベンゲルに突き付けた「失敗のスペシャリスト」の烙印

 

 このベンゲルの発言に対し、低姿勢だったモウリーニョが突如として牙を剥いた。豹変したポルトガル人指揮官は、2月14日のバレンタインデイに行われた会見で、侮辱とも呼べる表現を使い、ベンゲルを罵倒した。

「もしもベンゲルが正しいとして、私が失敗を恐れているとしたら、それは私があまり失敗をしないからだろう。彼は“失敗のスペシャリスト”だから、失敗を恐れる必要がない。実際に8年間もタイトルから遠ざかっている。もしも私がチェルシーで同じ成績なら、ロンドンを追われて、二度と戻って来ることはないだろう」

 ベンゲルは愛の日バレンタインデイに、モウリーニョから痛烈なしっぺ返しを受けた格好になったわけだが、「a specialist in failure」(失敗のスペシャリスト)という表現は波紋呼んだ。

「失敗を恐れているのではないか」と先制ジャブを繰り出したのはベンゲルだったが、英メディアは、この返礼の言葉はあまりにも敬意を欠くという見方をした。

 またベンゲル本人も、「モウリーニョの発言は、私を辱めるものではなく、チェルシーを辱めるものだ。私はチェルシーのために恥を感じている」と応戦。監督同士が痛烈な言葉を浴びせ合ったことで、チェルシーとアーセナルの間には憤怒の因縁が生まれた。

 さらにこの舌戦の1か月後、両者の因縁を深めたあの6-0が生まれた。

 前半15分の時点でギブスが一発退場(実はオックスフォード・チェンバレンのハンドボールだったが)となって、しかもこの反則はチェルシーにPKも与え、アーセナルにとっては決定的な不利となった。

 アザールがあっさりこのPKを決めたが、この得点はなんと3点目だった。前半5分にエトオ、7分にシュールレと続けざまに2点を連取されていたのである。3-0にされ、10人となったアーセナルの大敗はこの前半15分の時点で決定した。ちなみにこの試合は、ベンゲルのアーセナル監督1000試合達成という記念すべき試合でもあった。

 2003-04年シーズン、アンリ、ピレス、リュングベリ、ビエラ等を擁し、このコラムの冒頭で登場したキーオンが巨漢ソル・キャンベルとの強力なセンターバック・コンビで最終ラインを固く守っていたアーセナルは、無敗優勝を果たし、イングランド最強の春を謳歌していた。

 考えてみると、その最強アーセナルを引きずりおろしたのもモウリーニョ・チェルシーだった。

 ロシアの石油王ローマン・アブラモビッチの潤沢な資金を背景に、すでにチェルシーで頭角を表していたランパードやテリーに加え、ドログバ、ロッペン、チェフ等を獲得。するとモウリーニョはこのチームに、前シーズン伏兵ポルトを率い、欧州CL制覇に導いた勝利のメンタリティをあっという間に吹き込むと、わずか1敗で38試合を乗り切り、しかもプレミア記録を更新する勝ち点95を奪い取るおまけもつけて、ぶっちぎり優勝を果たした。

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