日本代表を救った“想定外の一撃”「あのゴールがなければ…」 あわやW杯予選敗退の危機に登場する「後世に語り継がれるヒーロー」は?

通常あまりゴールを期待されない選手が… 意外なポジションからヒーローが現れるか

ハリルホジッチはついに本田を下げてFWの小林悠を投入、さらにセンターバックの吉田麻也を前線に上げるパワープレーに打って出る。全員守備からボールを奪っても時間をかけて引き分けを狙うイラクからようやくゴールを奪ったのは山口のミドルシュートだった。清武のFKからセカンドボールに反応した山口はダイレクトで右足を振り抜き、決勝ゴールを突き刺す。ハリルジャパンを土壇場で救う一撃で2-1と日本が辛勝した。

 そこから日本はアウェーでオーストラリアに引き分け、ホームで首位のサウジアラビアを撃破すると、川島や今野の活躍により敵地でUAEにリベンジ。イランのテヘランで行われたイラク戦に引き分けて王手をかけると、“ハリルジャパン”のベストゲームとして語り継がれるホームのオーストラリア戦で2-0の勝利を飾って世界への扉を開いた。

 冷静に振り返るとイラク戦で山口のあのゴールが生まれていなければ、その後の良い流れもなく敗退危機に陥っていたかもしれない。山口に託されたタスクは別のところにあったが、最終予選では通常あまりゴールを期待されていない選手がこういった秘めたる能力を発揮して、大仕事をやってのけることもある。

 勝利が約束された試合など1つもないのが最終予選だ。内容的に相手を圧倒して勝てれば理想的だが、やはり救世主的なヒーローの出現が必要になってくるだろう。それはあらゆるポジションの選手に言えることだ。

 10月のオーストラリア戦でも決勝のオウンゴールを誘発したのは左サイドのアタッカーとして投入された浅野拓磨だが、貴重な先制ゴールをもたらしたのは4-3-3の中盤に抜擢された田中碧だった。

 アウェーのベトナム戦、オマーン戦、さらに続いていく厳しい最終予選を突破した時、後世に語り継がれるヒーローが誕生しているはずだが、FWの選手が期待通りにゴールという結果をもたらすのか、それとも意外なポジションからヒーローが現れるのか。それはサッカーの神様しか知らない。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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