日本代表を救った“想定外の一撃”「あのゴールがなければ…」 あわやW杯予選敗退の危機に登場する「後世に語り継がれるヒーロー」は?
【識者コラム】前回の最終予選、忘れられない山口蛍の活躍
日本代表は、カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選で現在2勝2敗の勝ち点6、3位オマーンと得点数の差で4位につけるなか、11月のアウェー2連戦でベトナム(11日)、オマーン(16日)と対戦する。
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サウジアラビアが4連勝で勝ち点12、日本に敗れたオーストラリアも3勝1敗で勝ち点9を獲得していることを考えれば、ストレートでカタールW杯の出場権を得られる2位以内に入るにはこの11月シリーズで2連勝を飾り、直接対決のあるサウジアラビア(第8節・22年2月1日)とオーストラリア(第9節・同3月24日)との差を詰めることがノルマになってきそうだ。
1998年のフランスから6大会連続でW杯に出場している日本代表だが、振り返れば救世主的なヒーローの存在が日本を勝利に導いてきた。特にバヒド・ハリルホジッチが率いていた前回の最終予選もいきなりホームでUAEに敗れるピンチに陥ったが、予選の途中からFWの主力に定着した大迫勇也をはじめ、原口元気、浅野拓磨、久保裕也、井手口陽介、さらには川島永嗣や今野泰幸など、日替わりヒーローのように勝利をもたらす活躍を見せている。
そうしたなかでも決して忘れられないのが、ホームのイラク戦で見せた山口蛍の活躍だ。
ホームで敗れたUAE戦は出場機会のないまま見送ったが、アウェーのタイ戦では原口元気や浅野拓磨とスタメンに抜擢され、最終予選での初勝利に貢献した。しかし、26歳の誕生日だったイラク戦、絶対的に勝利が必要とされたホームゲームはまたもベンチスタートに。中盤のスタメンは長谷部誠、柏木陽介、清武弘嗣だった。
日本は開始早々にCKからポスト直撃の危ないシーンを迎えたが、その後はリズムを取り戻すと前半26分に鋭いカウンターから、原口がタイ戦に続くゴールで幸先良く先制。リードを保ちながらもなかなか追加点が生まれないもどかしい展開のなか、ハリルホジッチは後半の早い時間帯から中盤の強度を高めるべく、山口の投入を準備する。
しかし、まさに山口が交代で入ろうかという後半15分にイラクが遠目のFKから酒井高徳に競り勝った相手FWサード・アブドゥルアミールが頭で押し込んで同点。ハリルホジッチ監督は「山口に説明していたので失点シーンは見ていない」と振り返るほど、悪いタイミングでの失点となってしまった。
「できるだけ高い位置でプレスをかけて、そして可能であればシュートを打っていこうと指示した。今日は山口に関して、かなり良いフィーリングがあった。アグレッシブさを持ってボールを奪うところが彼は興味深い」
そう山口に期待していたハリルホジッチだが、その時点で山口自身のゴールまでは想定外だったようだ。「イラクはデュエルが強く、身長も高く、我々は困難な状況になった」という状況で山口に期していたのは劣勢になりかけていた中盤の支配力を挽回して、鋭い攻撃につなげて行くことだった。
予期せぬ失点後、しばらく時間を開けてから投入された山口は後半22分に柏木との交代で中盤に入ると、持ち前の機動力で攻撃に絡んでいくが、原口のクロスに合わせた本田圭佑のシュートがポストに阻まれるなど、なかなか勝ち越しのゴールを奪えないまま時計が進んでいった。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。