EURO初戦で劇的弾に救われたフランス 「35.7%」と「21.1%」が示す開催国の苦戦ぶり

両チームとも低かった枠内シュート率

 まずは、シュートに関するデータから見てみたい。

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 両チームともに10本を超えるシュートを放っている。フランスは14本のシュートのうち前半8本を打っているが、枠内シュートは0本だった。しかし後半は6本のシュートのうち5本が枠内シュートで、1試合平均の枠内シュート率は35.7%だった。一方のルーマニアは、10本のシュートのうち枠内に飛んだのは2本だけで枠内シュート率は20%。当然のことながら、シュートは枠内に飛ばない限り得点の可能性はない。打ったシュートのうちの何本が枠内に飛ぶかという精度の差が、直接試合結果にもつながってくる。例えば先のキリンカップ決勝、日本とボスニア・ヘルツェコビナの一戦においても、日本の枠内シュート率25%に対してボスニアが67%という高い数値を叩き出したデータを見れば、日本の1-2敗戦という結果は必然のものだったと言えるだろう。

 EURO開幕戦に話を戻そう。この試合における決勝ゴールは後半44分、フランスのFWディミトリ・パイェのペナルティーエリア外からの目の覚めるようなロングシュートだったが、このような遠い距離からのファインゴールは稀だ。やはりゴールに少しでも近い位置からのシュートの方が得点の確率は高い。おそらく今後PA内(ペナルティーエリア内)シュート数は重要な指標になってくるはずだ。

 あまり知られていないが、2014年のブラジルW杯で優勝したドイツ代表の特徴として、ゴールに近い距離からのシュートによる得点が多かった。

 ドイツは相手ゴールから10メートル以内の距離からの得点が60%を超え、成功率も33.3%と、ショートレンジのシュートの3本に1本が得点に結びついていた。ベスト4に入ったオランダもショートレンジのシュート数自体は少なかったが、成功率はドイツと同様33.3%と非常に高く、ベスト4のチーム平均で見ても、ショートレンジの成功率はミドルの約2倍になっていた。

 一方、ブラジルW杯での韓国はショートレンジのシュート成功率は10%、日本も11%とベスト4のチーム平均の半分、ドイツ、オランダの3分の1と世界トップレベルとアジアのチームとの差は顕著だった。

 こうしたデータによる検証から、ドイツではショートレンジに入るためにどうするか、ペナルティーエリア内侵入後の状況をシミュレーションしながらのシュート練習を若年層から徹底し始めている。シュートレンジという観点から、この大会で勝ち残っていくチームのPA内シュート数とシュート精度には注目していきたいと思う。

 

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