“本命”イングランドはお約束? EURO優勝予想に見る英国の威勢の良さと根本的問題

英国には歴然たる人種差別があるのも事実【写真:Getty Images】
英国には歴然たる人種差別があるのも事実【写真:Getty Images】

EURO直前の親善試合で気になった試合前のワンシーン

 例えば、監督就任時の1975年には2部リーグに所属していた弱小ノッティンガム・フォレストをすかさず1部に昇格させ、そのわずか2シーズン後にイングランドを制して、1979年、80年にはCLの前身である欧州チャンピオンズカップを2連覇。そんな偉業を達成して“イングリッシュ史上最高監督”と言われたブライアン・クラフは、その歯に衣着せぬ言動と、独善的とも言える監督スタイルが敬遠されて、生涯代表監督の座に就くことがなかったという。

 そんなクラフとは逆に、FA幹部にとって取り成しやすい監督というイメージもあり、前任のアラダイス監督が英高級紙「デイリー・テレグラフ」のおとり取材に引っかかって、就任わずか2カ月で解任。外国人監督は使わない方針を固めて、乏しい候補者のなかから選んだため、イングランド代表の暫定監督をそつなく務めて正式監督に昇進しても、イングランドの勝利のためにベストの選択だったという印象は正直薄い。

 ただし、戦略的にはこれまでの4-4-2一点張りだった歴代代表監督に比べて、比較的モダンと言えるだろう。選手の特性を鑑み、効果的なシステムを導入する試みは見える。だが、やはり普段のクラブで反目し合う選手たちを、グッと一つにまとめる力が不足している。

 さらにもう一つ、選手の心理的な不安面を上げておきたい。それはパフォーマンス面では参考にならなかった、直近の親善試合2試合のキックオフ直前に起こった出来事が問題となる。

 英国では、昨年5月に始まったBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は重要)運動に連動し、試合前に選手がピッチにひざまずくことで、人種差別の撲滅を訴えた。

 そのポーズを代表チームも引き継いだわけであるが、この2試合でひざまずく選手たちにブーイングを浴びせる一部の観客の存在が露わになった。

 テレビ画面を通じてもはっきりと聞こえるブーイング。集団的に行われたことは明らかだが、これが選手の心理に与える影響は皆無なのだろうか。

 ご覧の通り、イングランド代表選手には黒人選手が少なからずいる。しかも彼らはユナイテッドFWマーカス・ラッシュフォードをはじめ、マンチェスター・シティFWラヒーム・スターリング、ドルトムントMFサンチョ、シティDFカイル・ウォーカー等々、勝敗を分ける堂々たる中心選手たちである。

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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