「重力が100倍に…」 ベテランGKが伝えたい、オバトレ症の現実と付き合い方

清水時代に「オーバートレーニング症候群」を発症したGK六反勇治【写真:Getty Images】
清水時代に「オーバートレーニング症候群」を発症したGK六反勇治【写真:Getty Images】

GK六反勇治、清水時代に発症した「オーバートレーニング症候群」の過酷さを初激白

 横浜FCのGK六反勇治は2019年にオーバートレーニング症候群になり、長期間の戦線離脱を余儀なくされた。ストレスに起因する慢性疲労状態では、プレーはおろか家から出ることも困難となった。同じ症状に悩まされたアスリートの中には引退に追い込まれた人もいるが、六反はこの苦難をどのように乗り越えたのか。「取材で“オバトレ”についてこんなに詳しく話したことは今までなかった」という貴重な体験談をお届けする。(取材・文=石川 遼)

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 オーバートレーニング症候群について、厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」では「スポーツなどによって生じた生理的な疲労が十分に回復しないまま積み重なって引き起こされる慢性疲労状態」と解説している。原因は肉体的・精神的ストレスを受けて体内のホルモンバランスが崩れるためと考えられ、競技パフォーマンスだけでなく、食欲不振や集中力の欠如、うつなどの症状により日常生活にも大きな影響が及ぶ。

 症状には個人差があると言われているが、清水エスパルスに所属していた2019年にオーバートレーニング症候群に苦しんだ六反の場合は身体に異変が生じるところから始まった。

「ある時、首や肩が回らなくなり、横を向けないような状態になりました。でも、それはGKとして身体を張ってセービングなどをしている後遺症のようなもので、しょうがないことだと考えていました。でも、今思えば身体がシグナルを送っていたんだと思います」

 少しずつだが、疲労は確実に蓄積されていたようだ。それはコップに注がれた水が溢れるように、身体の異常として表れた。その結果、六反はベッドから起き上がることすらできなくなったという。

「最初の2週間はベッドから起き上がれなくて、一番酷い時はご飯も食べない、トイレにも行かないという状況でした。ご飯を食べられないので体重は5kgくらい一気に落ちました。食べられなかったというか、そもそもお腹が空かなかったんですよね。何が一番楽かといえばベッドに横になっていることで、目を閉じてたらいつの間にか眠っていて、そのまま3、4時間寝てしまうんです。この頃は椅子に座っているのもきつかったので、起きて、横になって、そのまま寝るの繰り返しでした。

 まるで重力が100倍になったんじゃないかというくらいに感じて、立っていられないんです。トータルで1日17、8時間は寝ていました。朝、妻が子どもをマンションの下で幼稚園のバスに乗せて戻ってくるまでのわずかな時間でもう寝ているくらいでしたから」

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