「ポルトガル化」と「中国マネー」でプレミア躍進 古豪を復活させた異国の資金と人脈

ウルブスで活躍するポルトガル人選手(左から)モウチーニョ、ネト、ネヴェス【写真:Getty Images】
ウルブスで活躍するポルトガル人選手(左から)モウチーニョ、ネト、ネヴェス【写真:Getty Images】

【識者コラム】イングランドの“ポルトガル”クラブとしてウルブスが復活

 イングランドのクラブで最初に名前を覚えたのがウルブスだった。正式名称はウォルバーハンプトン・ワンダラーズFC、ウルブスは愛称である。私が小学生の時に来日したのだが、当時からウルブスと呼ばれていた。ウォルバーハンプトン・ワンダラーズだったら、たぶん覚えられなかったと思う。

 オレンジ色のジャージが印象的だったのだが、本当はゴールドなのだそうだ。ウォルバーハンプトン市のモットーが“Out of Darkness Cometh Light”(夜明けは必ず来る)で、チームカラーの黒が闇、ゴールドは光の象徴である。

 創設は1877年、イングランド代表主将ビリー・ライトがいた1950年代が全盛期だった。1953-54シーズンに初のリーグ優勝を成し遂げて夜間照明をつけた。当時はまだ珍しかったナイトゲームの親善試合が行われ、ウルブスはハンガリーのホンブドに3-2で勝利。ホンブドはイングランド代表に連勝したばかりのハンガリー代表(マジック・マジャール)の主力を揃えたクラブだったので、メディアはウルブスを「世界王者」と称えた。

 すると、フランスの「レキップ」紙の高名な記者ガブリエル・アノーが、「そこまで言うならヨーロッパのベストチームを決める大会をやったらどうだ」と主張し、チャンピオンズカップ(現在のUEFAチャンピオンズリーグ)が始まったという逸話がある。

 その後、長く低迷が続いていたウルブスに「光」が差し込んだのが2016年。中国の投資会社グループ、復星集団の中心である復星国際がクラブを買収する。2017年夏にヌーノ・エスピリート・サント監督を招聘、さらに補強に次ぐ補強で2部としては圧倒的な戦力を揃えてプレミアに昇格。昇格後も7位、7位と好成績をキープしている。

 闇から光へ、新生ウルブスはポルトガルのクラブになっている。

 エスピリート・サント監督は、FCポルトを率いていたポルトガル人。2部だった17-18シーズンに獲得したルヴェン・ネヴェスは、20歳でFCポルトのキャプテンを務めた逸材だ。さらにジョアン・モウチーニョ、ダニエル・ポデンセ、ルイ・パトリシオといったポルトガル代表選手が加入。今季はバルセロナからネルソン・セメドが来て、ポルトガル人は8人になった。セカンドジャージは白だが、サードはポルトガル代表と同じえんじ色である。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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