世界レベルで必要なフィジカルとは? ドイツの日本人鍼灸師が指摘する海外との“違い”

‟鉄人”長谷部はブンデスリーガのアジア人選手最多出場記録を更新【写真:Getty Images】
‟鉄人”長谷部はブンデスリーガのアジア人選手最多出場記録を更新【写真:Getty Images】

日本人選手がぶつかる壁、ボディコンタクトにおける「スタンダードの違い」

 頑丈さが一つの鍵だという。これまでにブンデスリーガでは、多くの日本人選手がプレーしている。日本だけではなく、世界中の選手から補強リストに上がってくるわけだから、世界トップ3リーグに入るとされるブンデスリーガのクラブから獲得されて、契約を勝ち取ったという点で高く評価されるべきなのは間違いない。

 ただ選手にしても、移籍できたらそれで大喜びというわけではないし、誰もがチームの主力となって、さらに上のクラブへステップアップを果たしたいと思ってやってくる。

 そんな彼らがまずぶつかる壁が、ボディコンタクトにおけるスタンダードの違いであることが多い。黒川氏もその点を指摘する。

「どんな日本人選手が来ても、最初は当たりが全く通用しないという状況で苦しむんですね。例えばボルシアMGにいたスタッフに聞くと、大津選手(大津祐樹/横浜F・マリノス)もそうだったようです。来た時はすごくいい選手だという評価をされていましたが、やっぱりボディコンタクトというところで相当苦しんでいたと」

 あるいはフランクフルトの鎌田大地も、2017年の移籍当初はそうだった。当時の監督だったニコ・コバチは鎌田の才能を認めていたし、実際に開幕戦ではスタメン起用をしていた。だがテストマッチではまだなんとかなっても、公式戦となれば相手の当たりもまた強くなる。

 ファウルとなるギリギリでぶつかってくる相手から、ボールを守ることができない。どれだけボールコントロール能力があっても、アイデアがあっても、スピードがあっても、俊敏であっても、競り合いごとにあっさりと倒れてしまってはチームとして計算することができなくなってしまう。結局鎌田は最初のシーズン、トップチームでプレーする機会はその後ほとんど訪れなかった。

 鎌田は今季レギュラーとして活躍しているが、ブンデスリーガをはじめとする欧州トップリーグでポジションをつかんでいる日本人選手は、皆そうした壁を乗り越えてきているのだ。

 海外でプレーするためにはまずフィジカルコンタクトに慣れることが大事というのは、間違いなく浸透してきていると思われるし、あらかじめ日本にいる間に準備をしてきている選手もたくさんいるだろう。どこまでその差をしっかりと認識しているのか。そこが大事なのかもしれない。

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(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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