“超攻撃的DF”闘莉王の流儀 「凡人」を「闘将」に変貌させたものとは

一流の負けず嫌いが抱く独特の美学

 トップランナーであり続ける秘訣は月並みかもしれないが、向上心なのだという。日本語も話せなかった日系三世の闘莉王少年は1998年、ブラジルの小さな町パルメイラ・ド・オエシチから渋谷幕張高校へ留学した。初来日から6年後に日本国籍を取得し、2004年のアテネ五輪に出場した。06年シーズンにはJリーグでMVPにも選出され、日本サッカー界のトッププレイヤーへと上り詰めた。10年の南アフリカ・ワールドカップ(W杯)では鉄壁の守備で、決勝トーナメント進出に貢献した。

 はじめは左足でボールを正確に蹴ることができなかった高校生が、ここまで来られた理由には並外れた向上心があった。

 そして、もうひとつの理由は、メンタルによるものだ。闘将には、プロフェッショナルとして独特の心構えがある。

「みんな負けず嫌いというのは当たり前だけど、負けず嫌いの中でも負けず嫌いでないとここまで来られない。プロと言っても、プロの中でもプロ。仕事のためにベストを尽くす。私生活からベストを尽くす。タフに戦える体をどう維持するか」

 結果至上主義の権化とも言える闘莉王は敗北を極端に嫌う。負けてヘラヘラしている不心得な同僚を見れば、厳しく一喝する。一流の負けず嫌いには独特の美学があるのだ。

「キープする、イコール怪我をしないというのは違う。それはプロじゃない。ベストの状態を保つには『こっちは足を引いた方がいいな』とか、『ぶつかったら怪我しそうだな』とか思ってはいけない。プロとしては、まず多少の痛みであってもやり続けることが一番だと思う。どの場面でも、必ずベストの判断を下す。体の管理はその後。すごく紙一重の判断だと思う。

 

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