「あれは僕のミス」 天を仰いだ長谷部誠、悔やんだワンプレーと仲間からの信頼
ブレーメン戦で終了間際に痛恨のPK献上、“勝ち点2”を取り損ねる
思わず天を仰いだ。
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審判の笛を待つまでもない。元日本代表MF長谷部誠は、すぐに自分がやってしまったことを分かっていた。
ホームにブレーメンを迎えた6日のブンデスリーガ第7節の一戦、後半43分にフランクフルトがFWアンドレ・シウバのゴールで逆転に成功し、あと数分で勝ち点3を手にすることができるはずだった。だが後半アディショナルタイム1分、GKフレデリク・レノウがセーブしてこぼれたボールが、ペナルティーエリア内にこぼれた。必死に駆け出し、足を伸ばした長谷部よりも早く、ブレーメンMFデイヴィ・クラーセンがボールに触っていた。響き渡る笛の音。土壇場でPKを与えてしまった。
「そうですね、完全にPKだった。自分は、ボールにアタックしようという感覚はあったんですけど、相手のほうが早くボールに触って。あそこは触ったら、相手もね。PKは取りに来てるかなというのはあった」
長谷部は試合後、そう振り返っていた。そして悔やんだのは、この直前のシーンのほうだった。
ブレーメンGKジリ・パブレンカが、前線にロングボールを蹴りこんでくる。長谷部はすばやく落下地点に入ったが、クリアしきれない。そこからピンチになり、最後のところにつながってしまった。
「GKからロングボールが来た時に、あそこの処理をもう少し上手くできたら、あそこまで行ってなかったと思う。本当に最後のところの集中力という部分で、欠けてはいけないところで欠けていたのかなと思いますね」
GKがPKを防いでくれることを祈ったが、ブレーメンのMFミロト・ラシツァが落ち着いてゴール。残り時間はほとんどなく、2-2のまま試合終了となった。今季のブンデスリーガは独走しているチームがない分、この日勝てば上位に食い込むことも可能だった。そうなれば満足して代表中断期にも入れただろう。悔やんでも悔やみきれない。
だからといって長谷部は、いつまでも引きずったりはしない。試合後のミックスゾーンでは落ち着きを取り戻し、いつもどおりの明瞭な口調で対応してくれた。
「試合自体も90分通して自分たちが主導権を握ってましたし、そのなかで非常にいいゲームができていたと思う。相手も引いていい守備をしていたなかで、最後にウチが勝ち越してね、これで勝てるというところで、最後自分がPKを与えてしまったので。まあ、自分の責任というのは非常に感じていますし、個人的には勝ち点2は自分で失ったかなと感じてますね」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。