中島翔哉への“激怒”事件と日本の才能の行く末 “未完”の欧州移籍がはらむ「使い捨てリスク」

ホッフェンハイム時代のMF宇佐美貴史【写真:Getty Images】
ホッフェンハイム時代のMF宇佐美貴史【写真:Getty Images】

ドイツで輝けなかった宇佐美、中島と同様「守備の作法」が身についていなかった

 メガクラブにとっての“ショーケース”になっているのだが、もちろんポルトに在籍していれば良いわけではなく、特筆すべき活躍をしなければならない。中島の攻撃力は、その可能性を秘めている。ただ、守備を覚えないと起用すらされなくなるだろう。

 現代サッカーで、自由に攻撃して守備はしなくていいのはリオネル・メッシなど、ごく一部のスーパースターだけだ。中島のテクニックがいかに優れていても、年間40ゴール取れるわけではない。その技術を発揮できるのも、90分間のうち2分間程度だろう。

 その他のボールのない時間は、守備や味方のサポートなどチームの歯車として機能できなければならない。この分野でスーパーでなくてもいいが、CLやELを考えるとそこでの平均レベルぐらいは必要になってくる。

 もし、中島がメッシのような待遇を望んでいるのなら、居場所はもっと小さなクラブになる。どのみち攻められるので守備要員はたくさんいるが、少ない攻撃でもなんとかしてくれるアタッカーが欲しいチーム。1点をもたらしてくれるなら、守備は免除でもいいというチームだ。

 もう一つ、気になるのは日本の育成である。

 今季は20歳そこそこの若手の欧州移籍が急に増えた。欧州側が投資的な目的で若手に注目しているので、この傾向はもう少し続くと思われる。行く先にもよるけれども、守備ができないまま移籍すると、行った先で苦労することになるだろう。ガンバ大阪の“傑作”だった宇佐美貴史も、ドイツではブレイクできなかった。宇佐美も中島と似ていて、守備の作法が身についていない選手だ。守備をする意識はあっても、攻守が切り替わった瞬間に自陣ゴールへスプリントするような瞬発力がない。ポジションに穴をあけてしまう。

 Jリーグでも、現在首位争いをしているFC東京と鹿島アントラーズは守備力を疎かにしていない。基本的に守れない選手はおらず、それが強さの土台になっている。他に目を向けても、守備はしなくていいというチームはないだろう。しかし、あまりに若く欧州移籍をしてしまうと、守備力を身につける機会がない。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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