“神の子”と呼ばれた背番号「9」の物語 逆境でこそ輝く“不屈のエース”トーレスの真髄

チェルシー移籍以降に陥ったスランプと、古巣復帰がきっかけの劇的な復活

 しかし、タイトル獲得を求めて11年にチェルシーへと活躍の場を移すと、それまで順調に歩んできたキャリアに急ブレーキがかかる。初ゴールまで903分間もの時間を要し、不本意なクラブワースト記録を樹立してしまうと、高額な移籍金を裏切るパフォーマンスに対し、メディアやサポーターからとめどない批判を浴びることになった。それでも、2年目にはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝を達成し、その翌年にはUEFAヨーロッパリーグ(EL)決勝で殊勲のゴールを決め、念願だったタイトルを2つ手にした。

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 その後、ACミランへ期限付き移籍するもスランプを脱することができず、評価を失墜させる一方だったが、苦しむエースに手を差し伸べたのが古巣アトレチコだった。14年に復帰を果たすと、息を吹き返したように二桁ゴールを記録。逆境からストライカーとしての復活を遂げ、トーレスに再び笑顔が戻った。18年にEL優勝を達成し、有終の美を飾って2度目の別れを告げるに至った。そして昨夏、世界各国からオファーを受けたなかで、鳥栖を新天地に選択することになる。

 鳥栖は熾烈な残留争いに巻き込まれていたこともあり、トーレスも、自身の武器を生かしたスタイルではなく、チーム戦術に合わせ前線で体を張るターゲットマンに徹した。リーグ戦3ゴールにとどまったものの、残留を懸けた運命の一戦となった第33節の横浜F・マリノス戦(2-1)では値千金の決勝ゴールをマークし、14位という瀬戸際での残留に大きく貢献。しかし、今季は度重なる負傷に加え、スペイン人のルイス・カレーラス前監督が解任された後は、金明輝監督の下で先発から外される試合が増えることに。その状況のなかで表明した現役引退だった。

 トーレスは、引退を決断した理由について「ベストのレベルに到達できていないという疑問点があった。自分がベストのコンディションで最後までやり続け、そこに到達できなくなるのであれば、その段階でサッカー人生を終えたかった」と言及し、「例えチームが首位を走っていたとしても、自分の考えが変わることはなかった」とも明言した。それは、負けず嫌いで知られる頑固なトーレスらしい信念に映る。

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