ブーイングなきバイエルンのCL16強敗退 ドイツ王者が認めた「自分たちの限界」

試合中ほとんどの時間、前線で孤立していたFWレバンドフスキ【写真:Getty Images】
試合中ほとんどの時間、前線で孤立していたFWレバンドフスキ【写真:Getty Images】

苦悩のレバンドフスキ「自分たちの試合ではなかった」

 一方のコバチ監督は、「試合をコントロールしたかった。守備をオープンにしないようにしたかったが、上手くいかなかった。相手の素早いプレスを受けてしまった。ミスをしたくなかった。攻撃では中央を避けてサイドからを狙った。左サイドで何度か良い形を作ったが、数的有利をあまり作れなかった」と、この試合の戦い方について記者に答えていた。

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 フンメルスが「1-2となるまでは五分五分の展開だった」と振り返ったように、確かにそこまではどちらにも勝つチャンスがあった。だが、後半24分に1-2となってからは何もできなかった。得点が欲しいのに得点が生まれそうな気配がなかったのだから。この試合、バイエルンが放ったシュートはわずかに6本。枠内シュートはダビド・アラバのミドルシュート1本のみ。そして得点は相手DFジョエル・マティプのオウンゴールだった。

 試合中ほとんどの時間、前線で孤立していたFWロベルト・レバンドフスキは、ノルウェーテレビの「ビアスポーツ」で、「今回の2試合ともあまりに守備的なプレーをしてしまった。プレスに行くこともできず、シュートチャンスを作り出すこともできなかった。後半はリスクをかけることもできずにいた。ホームでのプレーだったが、自分たちの試合ではなかった。だからリバプールは僕らに勝てた。守る位置が深すぎたと思う。リスクを冒さないようにプレーしていた。なぜかは分からない。前線では僕一人でいることが多かったから難しかった。一人であれだけのレベルの選手を複数相手にプレーするのは難しい」と心境を吐露していた。

 現在バイエルンには、センターフォワードを本職とする選手がレバンドフスキしかいない。バックアップだったサンドロ・ワーグナーは冬に中国1部の天津泰達へ移籍し、後釜の獲得はなかった。コバチは動こうにも、状況を変えるような一手を打つことはできなかったとも言える。

 とはいえ、点を取らなければならない状況となれば、なんらかの攻撃的な策がなければならない。怪我人が多かったと悔やむ声もあるが、怪我人はどのクラブでも出てしまう。一見予期せぬ出来事をも、あらかじめある程度以上予見されているかどうか、それをチーム作りや選手補強の段階からしっかりとプランニングし、トレーニングやミーティングから取り組まれているかが、チームの地力として評価されるところなのだろう。

 そして、その地力でリバプールはバイエルンを超えていた。

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(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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