アジア杯で考える「サッカーと審判の未来」 人間より“機械を信用する”流れは止まらない

感情を察する、コントロールする、これは人間の審判にしかできない事だろう【写真:AP】
感情を察する、コントロールする、これは人間の審判にしかできない事だろう【写真:AP】

未来のサッカーに人間の審判が残るとしたら…

 では、本当にやがて人間の審判は機械に取って代わられるのだろうか。極めて有能なAI(人工知能)が、すべてを判定するようになる日が来るのか。

 正確性に関して人間に勝ち目はない。電気回路のほうが優秀だ。機械が得意とする分野で人間が競争する意味はない。機械的である競争において、機械に分があるのは当然である。人間が機械になろうとするのは愚かだろう。

 人間にあって機械にないものは感情だ。電気回路に人の気持ちは今のところ分からない。感情を察する、コントロールする、これは人間の審判にしかできない。未来に人間の審判が残るとしたら、より人間らしくあることが決め手になるのではないか。つまり、ミスもするということだ。サッカー界も人間のやることは大目に見てきた。

 人はミスをする。それを許す、許さないのもまた人。人に機械と同じ性能を求めるのは、機械に人らしくするのを求めるのと同じくらい馬鹿げている。機械と結婚したい人はいないだろう。どんなに優秀でも人工知能はただの電気回路なのだ。

 おそらくこの先、サッカーはより機械を活用すると思う。“パンドラの箱”はすでに開けられた。人に代わってロボットがプレーする日が来ても、もうそんなに驚かない。

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(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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