大型補強を展開してきたインテルの危険な実情 エース放出に踏み切る理由とは
FFPによる罰金対策で司令塔コバチッチをレアルに放出
今季強豪復活に向けて大型補強を続けてきたインテルの意外に苦しい台所事情が明らかになっている。イタリア紙「ガゼッタ・デロ・スポルト」が伝えている。
クロアチア代表MFマテオ・コバチッチは2013年1月にインテルに加入した。背番号10を与えられ、インテルの将来を担う存在として認識されているはずだった。しかし、現実には今夏の移籍市場でレアル・マドリードへの移籍が秒読み段階にあるという。ロベルト・マンチーニ監督もその動きを認めた上で、移籍の理由をこう語った。
「残念ながら、尊重すべきルールというものがある。そう、ファイナンシャル・フェアプレー( FFP)だよ。我々の誰もがコバチッチを売ることなど望んではいないんだ。しかし、UEFAによるルールがある以上、我々には義務が発生するんだ」
言葉の端々から苦々しさを感じさせながらマンチーニ監督は語った。インドネシア人富豪のエリック・トヒル会長は今オフに財布の紐を一気に緩めた。モナコからフランス代表MFコンドグビア、アトレチコ・マドリードからブラジル代表DFミランダ、グラナダからコロンビア代表DFムリージョと次々に補強した。
だが、移籍金と年俸とクラブの収益のバランスは再び崩れている。大型補強で強化費が膨張する一方、タレントを売却し、人件費をスリム化できなければ、UEFAから巨額の罰金を科されることになる。昨季パリ・サンジェルマンとマンチェスター・シティは規定違反からUEFAに83億円というペナルティを支払っている。
契約期間をわずか1年という日本代表DF長友佑都を放出しても、巨額の移籍金を手にすることはできないことを百も承知で、インテル強化部が躍起になっているのは、クラブでトップクラスという長友の年俸削減にある。そして、指揮官の恨み節は続いていく。
「何も、コバチッチ抜きで競争力のあるチームを作ろうとか、そんなことを言いたいわけではないんだ。失望しているのは間違いない。(ジェルダン・)シャチリの移籍にも同じ意味合いがある(プレミアリーグ、ストーク・シティへ移籍)。望んでいたことではないが、別の要因があるということなんだ」
コバチッチとシャチリという才能あふれる若手コンビの移籍で、インテルは移籍金を得ることになる。年俸も削減することができる。マンチーニ監督は、この台所事情の中でも補強の必要性をあらためて説いている。
「我々に適合する選手を見つけなければいけない。しかし、時間はあまり残されていないんだ。全てを急がなければいけないし、少なくとも7日以内にはスタートさせなければならない」
長友の去就も定まらない中、プレシーズンでは低調な成績に終わっているインテル。リーグ開幕まで1週間を切った中で、名門の船出は前途多難の様相を呈している。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images