西野監督と日本サッカー協会の「皮肉な巡り合わせ」 W杯へ“二度の苦い経験”がカギに

技術委員長交代のサイクルが代表監督より早いようでは…

 監督交代を、ここまで引っ張ってしまったのは失態だ。しかしコーチングスタッフについて「できるだけ世界を経験してもらいたい」と言及しており、ある程度将来を見据えた決断だったことも窺える。同じく苦境なら、せめて日本人スタッフの経験値を残したいとの思いだ。

 会見ではメキシコリーグの状況説明にも触れており、ほぼ本田圭佑(パチューカ)の招集は確実なのだろう。またハリルホジッチ前監督が見送ってきた経験値の高い欧州組の復帰の可能性も高まった。だが将来を睨んで決断をしたなら、過度に経験値ばかりに固執し4年前と代わり映えのしない人選だけは避けてほしいと思う。

 また、これはロシアW杯以後の話になるだろうが、さらに重要なのは構造改革への着手だ。

 ハリルホジッチ監督は、前技術委員長の霜田正浩氏(現・レノファ山口監督)が招聘した。だが結末を見届けずに技術委員長が交代し、今回も西野氏の“転職”により、技術委員長は代表監督より後づけになった。要するに前技術委員長が身をもって、日本サッカーの道筋を示していく事態になったわけだが、技術委員長交代のサイクルが代表監督より早いようでは、日本の方向性は定まらない。

 時代は変遷し、指導者に限らず、スカウティングなども含めて、海外でハイレベルな経験を積んだ人材は増えている。技術委員会を筆頭に牽引車を入れ替え、もっとスピーディーに動ける組織への改革を急がないと、世界は遠のくばかりである。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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