日本の高校サッカーから“考える力”を奪うもの ベルギーで痛感した同調圧力の有無

少なくともサッカーではマイナスに作用する

 自分が良い、正しい、やりたいと思うことを実行する時のハードルが低い。一方、高校生がヒゲを生やせない日本は、たとえ自分が正しいと思っても実行するには周囲の顔色を見なければならない。同調圧力のハードルは高く、それを越えるための戦いは面倒くさい。

 ヒゲくらいなら頑張らなくてもいいかもしれないが、監督の「良い子」でいるために試合に負けたら意味がない。監督だって指示を無視しても勝った方がうれしいだろう。そもそもサッカーは、選手が自分で考えてプレーしなければならないスポーツである。

 同調圧力の強さこそ、最も大事な「自分で考える、判断する」という能力を奪っている元凶ではないか。誰にも迷惑でないのに「ヒゲを生やすな、周囲と同じにしろ」と圧力をかけ続ける教育とは、「考えるな従え、言う通りにさえしていれば悪いようにはしない」という、要は管理者に都合の良い人間を大量生産する装置としての一面を持つのだろう。

 正しいと思うこと、良いと考えたことを実行しにくいというのは、少なくともサッカーではとてつもなくマイナスに作用する。高校生諸君! ヒゲを生やせ、髪を染めろ、指導者は見て見ぬふりを……世界で勝つために、まずはそのあたりから変えてみるのはいかがだろうか。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



page1 page2 page3

西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング