「賢人は歴史を語る」 名将・小嶺監督が選択した“二つの初めて”と直面する“壁”

13分で嶋中を投入「経験豊富な彼に頼った」

 そして、送り込まれたのがDF嶋中春児だった。

 登録こそDFだが、与えられた役割は2トップの一角。それでも、「2年生が出ていて、緊張して悪いプレーをすることもあるし、早い段階で出ることもあるかな」と心の準備はできていたという。「スタメンを外れた悔しさが大きかったので、入った時はかましてやろうと思って」と思いをピッチにぶつけ、投入から4分後に先制ゴール、後半には2点目をアシストするなど見事に起用に応えた。

 さらに、嶋中は2点をリードして後半の残り時間が少なくなると、センターバックにポジションを変えた。柏木を含めた起用からも見える通り、試合中にポジションを頻繁に変わっても混乱しないのが小嶺監督のチームの強みだろう。嶋中は「練習からいろいろなポジションをやっているし、守備の選手が攻撃練習をすることもあります。それはチームの強みだと思います」と自信を見せた。小嶺監督が「経験豊富な彼(嶋中)に頼った」と話した起用も、下準備があったからこそ可能だったと言えるだろう。

 小嶺監督は島原商業や国見高校(ともに長崎)を率い、全国大会制覇の経験も豊富だ。それでも「僕も壁に当たっている」と、歴史の力を語った。

「賢人は歴史を語り、愚者は経験を語るという言葉もあります。歴史の重さを考えないような指導者は長続きしません。歴史の重みは、いっぱいの失敗と試行錯誤ですから。世の中が、豚もおだてれば木に登るという風潮ですが、スポーツでそんなに甘いものじゃないというものを見せたい」

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