数字が示すハリルJ船出の真実 過去の「日本式」と決別した成果とは

ハリルホジッチ監督が示した可能性、日本サッカーはどう変わるのか?

 2月3日、アギーレ前日本代表監督の契約解除を受け、日本サッカー協会の技術委員会による新監督選びが始まった。様々な名前が飛び交う中、3月14日に前アルジェリア代表監督のバヒド・ハリルホジッチ監督の就任が発表された。就任会見を見る限り、負けず嫌いで、規律を重んじるタイプを連想させ、その後の報道では様々なシステムを柔軟に使いこなす戦術家としての顔が紹介された。

 就任後精力的にJリーグの試合を視察したようだが、初陣までせいぜい2週間。生で選手を見ることが出来る時間は限られていたはずだ。そうした中、31人のメンバー+12人のバックアップメンバーが選出された。おそらく技術委員会等の情報を基に多めに呼んで、直に見て、競争を煽ったのだろう。

 3月27日のチュニジア戦、31日のウズベキスタン戦、この2試合では代表定着を狙う選手たちがどのようなプレーを披露したのか。ハリルボッチ監督はどのような意図をもってチーム作りをしたのか。たった2週間の準備で行った2試合の情報の中からそのヒントを探ってみたい。

 3月27日チュニジア戦。過去3戦はいずれも10年以上前の対戦だが、1996年加茂監督時代に1-0、2002年日韓ワールドカップ本大会のグループリーグにて2-0、そして2003年ジーコ監督の時も1-0と相性の良い相手だ。日本代表はメンバー選考から漏れた遠藤や怪我の長友はもちろん、本田、岡崎、香川、川島、内田という常連のメンバーを外してのスタートとなった。

 まずは特徴的なデータを見てみよう。ポゼッションは日本の54%に対してチュニジアは46%、パスは日本530本(成功率84%)対チュニジア443本(成功率79%)、シュート日本10本対チュニジア2本。シュートの内訳をみるとカウンターからのシュートが3本、ポゼッションからが2本、そしてリスタート絡みが5本となっている。相手のアタッキングサードに侵入した攻撃機会は日本の83回に対してチュニジアが58回だった。

 83回の攻撃機会中19回がカウンターアタックで、これはチュニジアの10回を大きく上回る。注目すべきは攻撃のエリアだ。これまでの日本代表はサイドで起点を作ることを重要視してきた。例えば2014年のブラジルW杯の初戦コートジボワール戦では日本の生命線と言われた左サイドからのアタックが約5割、右サイドが約3割、そして中央が2割という構成だった。それがこの試合では、左サイドが26%、右サイドが37%、中央が37%と中央からの攻撃がこれまでの倍に増えていた。

 この試合、相手から奪ったボールを安全に繋ぐのではなくシンプルに前に送るパスが目立った。実際日本の縦パスは199本(成功率83%)、チュニジア166本(成功率72%)と縦パスを出す出し手の意識、後ろからシンプルに前に来るからしっかり受けようという受け手の意識がともに高まっていたことが分かる。

 シンプルに前にボールを運ぶことで失点のリスクが減るのは当然のことだ。日本は87回、チュニジアは86回ボールをロストした。パス全体が日本の方が多いのでロストする率が少ないことになる。特徴的だったのは自陣でのロスが日本が15回、チュニジアが28回と危険なエリアで奪われるプレーが格段に少なかったことだ。奪われたボールを奪い返すという機会が日本が45回、チュニジアが40回、そのうち相手陣内で奪い返すプレーが日本は12回に対してチュニジアは3回だけだった。

 さあ、データから見た新生日本代表のサッカーをまとめてみよう。

 攻撃の優先順位は相手ゴールまでの最短距離を最短時間で目指すのがファーストプライオリティだ。サイドからの攻撃は、速く相手のゴールを目指すプレーが出来ない場合に初めて行うという優先順位のようだ。

 相手の攻撃を止めればそれは同時に味方のチャンスということで奪ったボールをなるべくシンプルに前に運ぶこと、それを意識して前線の選手が準備するのも約束事のようだ。そして自陣でボールを奪われるようなプレーは極力避け、同時に奪われたボールは相手陣内であっても素早く奪い攻撃につなげるというのがハリルホジッチ監督の目指すサッカーなのだろう。

 果たして、本当にそうなのか。もしそうであればメンバーが変わっても同じコンセプトのサッカーを行うはずだ。そういう視点でウズベキスタン戦を見てみたい。

 

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