J初の“女性実況者”「一番しんどい」 批判の声に葛藤も…掴んだ念願の国際舞台「粛々と向き合う」

U-17女子W杯で実況を務めるフリーアナウンサーの平山未夢氏【写真:林遼平】
U-17女子W杯で実況を務めるフリーアナウンサーの平山未夢氏【写真:林遼平】

フリーアナウンサーの平山未夢はFIFA U-17女子W杯で実況を務める

 サッカーの国際大会で女性が実況を務めるのは、日本で2人目になる。FIFA U-17女子ワールドカップのグループリーグ第2戦で実況を担当するのは、フリーアナウンサーの平山未夢(みゆ)だ。J3、WEリーグ、イングランドのWSLと実況の場を広げてきたなかで巡ってきた、キャリア初の国際大会。本人は「率直に目標達成」と語りながら、「やることは変わらない」と言い切った。日本代表を応援する視聴者に向けて話すことへの期待、初めて目にした選手たちへの思い、そして準備の中身。本番を前にした胸の内を聞いた。(取材・文=林遼平/全2回の1回目)

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 Jリーグ公式映像初の女性実況者として2024年9月にデビューしてから、約2年。最近はJ3やWEリーグ、WSLの実況に加え、J1のピックアップマッチのMC、AFCチャンピオンズリーグやルヴァンカップ、天皇杯でのインタビューなども担い、仕事の「8割はサッカー中心」だという。そのなかで決まった国際大会の実況を、平山はどう受け止めたのか。

「率直に目標達成だな、と思いました。サッカーというコンテンツでもう少し上のステージに行きたいという思いは間違いなくありましたし、国際大会は大きな目標の一つでしたから」

 もっとも、気負いはない。J3ではJFLから上がってきたばかりのクラブの試合を担当する一方、MUFGスタジアム(国立競技場)やノエビアスタジアム神戸でも仕事をしてきた。舞台の大きさや観る人の数が違っても、やることは変わらなかったという。

「関わる人が増えるぶん責任は大きいかもしれませんが、サッカーサポーターに対して観戦が豊かになる仕事をするだけ。大会が大きいからといって気合を入れるのも違いますし、J3だから手を抜いていいかと言われたら、それは絶対に違う。粛々と向き合うだけです」

 それでも、国際大会には国際大会ならではの条件がある。相手は他国の代表で、画面の向こうの視聴者の関心は、おのずと日本に傾く。これまでの実況では、担当したクラブの勝利を盛り上げて伝えたところ、肩入れしていると批判が寄せられたこともある。本人は「図太いけど繊細」と自認する。100の「いいね」があっても、1つの批判に傷ついてしまう。

「私が実況をやっていて、一番しんどいのは『偏っている』と言われることなんです。試合結果によって何を言われるか分からないので、昔よりチャレンジ精神がなくなってきてしまう。炎上しないように、肩入れしていると思われないように、平等に、と考えるようになる。でもそれだと、私を使っていただいている意味がないというか。その狭間で、今はすごく悩んでいます。今回は日本と海外の国の対戦で、DAZNを見ている方は基本的に日本を応援していると思うんです。そのストレスから解放されるのは、正直、フットボールに集中できるという意味で大きい。別の難しさや別のプレッシャーもきっとあると思いますが、今は素直に楽しみです」

 今大会の実況は、現地には行かず、スタジオで映像を見ながら行う形(オフチューブ)となる。現地のスタジアムで実況する場合と何が違うのか。平山は両方の良さを感じている。

「やっぱり現地が一番、というのはそうです。スタジアムの熱量が言葉に乗りますから。ベテランの方々はオフチューブでもその熱量を乗せていらっしゃると思うんですけど、私はまだ未熟なので、バレるんです。古巣のディレクターにも、現地だといいねと言われます。ただ、オフチューブだと画面に集中するので、目の前のサッカーに向き合うという意味ではいい面もある。慣れていかなければいけないですね」

 もう一つ、平山が目下の悩みに挙げるのが、解説者との掛け合いだ。J3では一人実況が中心で、解説付きの経験はまだ少ない。解説付きは実況と解説者への対応という二つの仕事になるため、一人実況よりむしろ難しいと感じており、最適解は今も探しているところだ。

 準備はこれからが本番だ。局アナウンサー時代は試合数が少なく、前々から準備ができていた。いまは試合数が多く、1試合だけに注力するわけにもいかない。取りかかるのは1週間前ごろからになる。ただ、ゴールの瞬間の言葉だけは、あえて用意しないと決めている。それでも、この選手ならこういう言葉だろうか、と思い浮かべることはあるという。

 その言葉探しが始まったのが、初めて訪ねたJFA夢フィールドだった。公式練習を見たあと、選手たちに話を聞いた。練習中は網に張りつき、ボール回しを見ながら「何かないか」とつぶやき続けていたという。本人いわく「超怪しい人」だ。選手たちは高校生ばかりだったが、大会に向けて「やる気が出ました」と話す。

「まだ結構、選手たちがキャピキャピしていて、実感がこもっていない感じはありましたけど、一人ひとりと向き合うと、それぞれに目標があることがわかりました。結果を残すこと、楽しむこと、いろいろな目標がある。今回の私のミッションは、この競技の魅力と、この子たちの魅力を伝えることだと思っています。初めて見るというファンの方のほうが多いはずなので、この子面白いな、将来活躍しそうだなと思ってもらえたらいいなと思います」

 監督にも話を聞くと、フィジカル面が厳しいという話が出た。どうあがいても勝てないものを、どう頭を使って倒していくのか。そこに競技の面白さがあると感じ、言葉で色付けていく作業になると考えている。心がけるのは遊び心だ。90分を見た人に「置き土産を置いてやろう」とする気概があるという。その根にあるのは、実際に会った選手たちへの思いだ。

「あれだけ近くで選手たちと関われる機会もなかなかないですし、選手たちの色が見えたんです。頑張る子たちなんだろうな、と。それを私が台無しにしないように、その魅力や温度感が伝わるように届けられたらいいなと思っています」

 22日に行われるグループリーグ第2戦。平山が国際大会で最初に言葉を届けるのは、リトルなでしこ(U-17女子日本代表)の選手たちだ。その言葉へのこだわりは、どこから生まれたのか。第2回では、実況者としての歩みと、その根にある考えを聞く。

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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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