新大会“アジア版ネーションズリーグ”とは? 実力国で切磋琢磨も…“空白シーズン”常態化への懸念

アジア版ネーションズリーグの可能性は?【写真:徳原隆元&アフロ&ロイター】
アジア版ネーションズリーグの可能性は?【写真:徳原隆元&アフロ&ロイター】

アジア独特のNLフォーマット

 AFC(アジアサッカー連盟)は2030年からアジア版ネーションズリーグをスタートさせると発表している。

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 UEFA(欧州サッカー連盟)が2018年から始めたネーションズリーグ(NL)は他の大陸に広がっている。CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)は19年にNLを開始。CAF(アフリカサッカー連盟)も29年開始の予定である。

 UEFAがNLを始めたのは意味のないフレンドリーマッチを減らして大会形式とすることでの商業化を狙ったものと考えられる。他の大陸の目的も同じだろう。

 AFCが開始するNL案はUEFAとは少し違っていて、W杯予選とアジカップ予選が組み込まれている。これは現在のカレンダーでは予選とNLを別にすることが日程上無理だからだ。ただ、これがかなり大きな問題を生むことになるのだが、その点は後述したい。

 まずはAFCが開催するNLとはどういう大会なのか。まだ詳細が決まったわけではないが、現時点までの案からすると以下のようになるらしい。

●AFC加盟47チームを3つのレベルに分ける。チーム数は18・18・11。
●ホーム&アウェーによる年間6試合で順位を決める。
●対戦する3チームはその都度抽選によってランダムに決められる。
●トップカテゴリー(Tier1)の1~8位は準々決勝進出。決勝までを行う。
●Tier1~3はそれぞれ昇格降格があり入れ替えられる。

 そしてこの形式の中にW杯予選、アジア杯予選が組み込まれる。

●Tier1の上位6チームはW杯予選通過。7~10位はプレーオフに回る。
●アジア杯はTier1の18チーム+Tier2の上位6チームが自動的に出場権を得る。

 さて、このNLにはメリット、デメリットがあるわけだが、その前に次回30年W杯についてはまた出場権獲得方法が違う。NLは2028-29シーズンにパイロット版が行われる。これが実質的にはW杯予選。形式は各6チームの3グループによる総当たり(H&A)を行い、グループ1、2位×3の6チームがストレートイン。残り2.5枠をプレーオフで争う。とはいえ、次回W杯がさらに拡大する可能性もあり、アジア枠がそれに伴ってどれだけ増えるかも分かっていないので、このとおりになるのかは定かではない。

 本格的なスタートは30年。おそらく29-30シーズンを指していると思われる。日本が前シーズンのパイロット版で6位以内に入っていれば、29-30の第1回NLの順位はW杯にもアジア杯にも何の影響もない。もともと親善試合の商業化が目的だから、そういうものでいいのかもしれないが。

 NLのメリットは実力の近いチーム同士の対戦が増えること。勝敗が分かりきっているような試合がなくなる。切磋琢磨によって質の向上が期待できるというわけだ。試合の価値が上がるので放映権料を高く設定できるというのが狙いと思われる。

 デメリットは格差固定が予想されること。格上チームとの対戦が減り、経験を得られない。また、場合によっては移動負担も大きくなる。どの3チームと対戦するかは、その都度ランダムに決められるので、例えば日本がサウジアラビア、イラン、カタールと全部中東との対戦になれば移動負担はかなり大きい。欧州でプレーする選手は欧州、日本、中東の移動を余儀なくされることになる。

 W杯予選、アジア杯予選を組み込むのがAFC案の特徴なのだが、まず疑問なのが予選の試合数だ。30年W杯の10試合(12試合案もある)はいいとして、次の34年W杯は33-34NLの6試合で決められることになる。いくらなんでも少なすぎるのではないか。相手の3チームが抽選というのも運不運に左右される部分が大きくなりそうである。

 何より疑問なのが、NLに予選を組み込んだことで1年おきに何もイベントのない空白のシーズンが常態化することだ。現行案のスケジュールでは以下のようになると思われる。ちなみにAFCは31年アジア杯を32年に延期する意向なので、それに合わせてみた。

28-29 NLパイロット版(W杯予選を兼ねる)
29-30 NL
30年W杯
30-31 ?
31-32 NL(アジア杯予選を兼ねる)
32年アジア杯
32-33 ?
33-34 NL(W杯予選を兼ねる)
34年W杯
34-35 ?

 これならむしろNLを毎年開催し、2年分の戦績でW杯、アジア杯の出場権を決定した方が良さそうに思える。まだ不明な点が多々あり、これからさまざまな矛盾を解決していくと、大会フォーマット自体が変わる可能性もあるのではないか。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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