23歳の苦悩「代表では出せていない」 怖いもの知らずのJ時代…定着に必要な鍵「前向きなトライ」

代表国内4連戦をそれぞれ違う時間と起用法で出場した鈴木淳之介
「チームのやるべきことをしっかりやったという感じです」
その言葉が、今のDF鈴木淳之介を象徴しているように聞こえた。今夏の北中米ワールドカップを経験し、森保ジャパンの重要な戦力として迎えた今回のキリンチャレンジカップ、キリンカップ国内4連戦。初戦のウルグアイ戦では3バックの右CBとして後半18分から途中出場。2戦目のベネズエラ戦では3バックの左CBでスタメン出場し、後半26分から右CBへと移ってフル出場。第3戦のエクアドル戦でも後半22分に投入されると、右ウイングバックとしてプレーし、最終戦のニュージーランド戦では4バックの左サイドバックとしてスタメン出場から後半33分までプレーした。
システムもポジションも、投入される時間帯も違う。それでも彼は与えられた役割を淡々と遂行した。
「どの相手、どの状況、どのポジションで出るのか分からない難しい状況のなかでは、最低限の仕事はできていると思うので、そこは前向きに捉えていいかなと思います」
確かにその通りだ。スタメンで使ってもゲームの流れを作ってくれるし、途中出場でも試合を落ち着かせたい時、リードを守り切りたい時には、鈴木ほど確実な計算できる存在はそう多くない。空中戦に強く、球際で戦え、守備のポジショニングを崩さず、ボランチやCBで培ってきた視野の広さと技術を生かして前線へ攻撃のスイッチを入れる縦パスを差し込むこともできる。
ニュージーランド戦では2-1と勝ち越したMF堂安律のゴールにつながる攻撃で、鈴木のヘディングがMF中村敬斗へ渡った。
ただ、4試合を通じて鈴木の表情を見ていて、どこか晴れ切らないものを感じていた。それをぶつけると、何度も「難しいですね」と口にした。
ウイングバックをこなす伊東純也には圧倒的なスピードがある。堂安にはカットインから左足で局面をこじ開ける力があり、中村にはゴールへ直結する突破力がある。では、ウイングバックやサイドバックで起用された時、鈴木は攻撃面で何をプラスしていくのか。
「僕は自分一人で打開したり、ボールを運んだりすることができる選手じゃないので、うまく相手と駆け引きしながら、味方がいかにスムーズに前向きなプレーができるか。そういう状況を作り出すパスをすることが自分の強みだと思っています」
答えは、明確にある。スペシャルな選手になるのではなく、スペシャルな選手を生かす。
「チームでも代表でも自分よりスペシャリティーがある選手がたくさんいる。そういう選手たちがいかにプレーしやすく、前向きなトライができるか。そこが大事なんじゃないかなと思います」
これは決して消極的な考えではない。誰と組んでもバランスを崩さず、周囲の特徴を引き出しながら、チーム全体を機能させる。攻撃のスイッチを入れるパスを送り、守備では危険を察知して穴を埋める。それも間違いなく一つの「スペシャリティー」だ。
一方で、鈴木自身がそこだけで満足しているわけでもない。
「日本の人たちに見てもらえるのは代表のみなので、しっかりプレーしたいし、湘南の時のようなプレーを見せたい。まだ代表では出せていない」
この言葉も印象的だった。湘南ベルマーレ時代の自分を、鈴木は「怖いもの知らずだった」と表現する。周囲のレベルが上がり、代表という場所で勝利を求められるほど、「任せるところは任せる」という判断も増えた。
それは成長でもある。だが同時に、かつて持っていた大胆さまで失う必要はない。
「もっとできるなと思います」
この一言に、鈴木が今感じているものが凝縮されているように思えた。守備とバランスにさらに磨きをかけるのか。周囲を生かす「関わる力」を突き詰めるのか。それとも、そこに自ら局面を変える新たな武器を加えていくのか。
今すぐ答えを出す必要はないし、むしろ複数のポジションを任され、試合のさまざまな局面で必要とされているからこそ、その答えを一つに定めることが難しいのだろう。でも、その迷いを抱えながらもピッチに送り出されれば仕事をする。それこそが、W杯を経験した鈴木淳之介がすでに持っている強さでもある。
そのW杯について、鈴木はこう振り返った。
「正直、悔しい舞台ですし、もう一度戻らないといけない舞台だと思うので、基準高くやろうと再認識した舞台でした」
これから先、「チームのタスクを無難にこなした」で終わらせるつもりはない。守備で計算できる。試合を落ち着かせられる。どこで起用されても大崩れしない。そして、スペシャルな仲間たちを生かすことができる。そこから、さらに何を加えるのか――。
W杯という世界を知った23歳は今、自分自身の次の扉の前に立っている。不安と大きな期待を胸に抱きながら。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

















