突然の正式オファー「予想外すぎて」 高卒プロ入り拒否で進学…逸材大学生が決断したJ2加入

大分に加入が内定した筑波大学の徳永涼【写真:安藤隆人】
大分に加入が内定した筑波大学の徳永涼【写真:安藤隆人】

筑波大学4年MF徳永涼が大分へ加入内定

 9月22日、筑波大学4年のMF徳永涼が、2027シーズンから大分トリニータに加入することが発表された。

 柏レイソルのアカデミーから前橋育英高校へ進み、背番号14を背負ってキャプテンとしてインターハイ優勝を経験。高校卒業時にはJリーグの2クラブから正式オファーを受けながら、筑波大学への進学を選んだ。

 あれから4年。再び人生の岐路に立った彼が、自らの意思で選び抜いたクラブが大分だった。決断に至るまで何を考え、どのような思いを抱いていたのか。その胸中に迫った―。

 徳永は広い視野と優れた状況判断能力を持ち、正確なキックで攻撃を組み立てるボランチだ。相手の動きを予測して危険なスペースを埋め、パスコースを読み切ってボールを奪う。攻守の切り替えを素早く察知し、周囲を動かしながらチーム全体をコントロールする。そして、もう一つの大きな武器がキャプテンシーだ。

 前橋育英高、日本高校選抜、筑波大学でキャプテンを任されてきた彼は、常にピッチ内外で周囲に目を配り、時には厳しい言葉を投げかけながらチームを力強く牽引してきた。
そんな彼が大分を選んだ最大の理由をこう語った。

「本当に自分をここまで評価してくれたというか、必要と思ってくれている熱意、誠実さが伝わったのが最終的な決め手です」

 始まりは、予想もしなかった突然の正式オファーだった。2025年11月の関東大学リーグ1部最終節・桐蔭横浜大戦を終えた翌日、大分の関係者が筑波大学を訪れた。そのことは徳永自身も知っていた。

「4年生の(MF山崎)太新さんとの正式な契約のために来ることは聞いていました」

 だが、午前中に小井土正亮監督のゼミの授業を受けていると、小井土監督から「トリニータさんがお前にも話があるらしいから午後に研究室に来てくれ」と声をかけられた。

 そして、その言葉通りに教授室へ行くと、大分の強化部からいきなり正式オファーを受けた。

「正直、予想外すぎてびっくりしました。てっきり『練習参加をしてほしい』という話だと思っていたので、まさか正式オファーが来るとは思っていなかったので」

 喜びを感じながらも、即答はできなかった。ちょうどその時、別のJ2クラブからも正式オファーが届いており、練習参加の話もあったからだった。

「もう少し他のクラブの話を聞いてみたいです」

 その率直な思いを、大分側も尊重してくれた。決断を急かすことなく、じっくり考える時間を与えてくれたという。

 この日から、徳永の頭の中に大分という選択肢が生まれた。そして年が明けた2月、初めて大分の練習に参加することになった。約1週間の参加で感じたのは、練習強度の高さとチームの雰囲気の良さだった。練習量も多く、タフさが求められる環境。その中で吉岡宗重スポーツダイレクターからクラブの理念や将来のビジョンを聞き、強い興味を抱いた。

 関東1部リーグが開幕すると、筑波大のキャプテンとしてチームを牽引。前期終了後の7月上旬から中旬にかけて、2度目の練習参加に臨んだ。

 新たなシーズンに向けてチームを作り上げる時期に合流し、練習試合にも2試合出場。自分の現在地を確かめると同時に、クラブの一員となるイメージをより具体的に描くことができた。

 気持ちが固まりつつある中で、8月4日から17日までの全日本大学選抜のイタリア遠征に参加。そして9月4日、改めて自分自身と向き合った末に、最終的な決断を下した。

 決断後は、自らの口で意思を伝えたかった。小井土監督に報告した後、獲得に動いてくれた平井秀尚スカウトに直接電話をかけた。契約時には「いい返事をしてくれてありがとう」と言われたという。しかし、徳永の思いは逆だった。

「ありがとうは僕の方こそ言いたいです。トリニータは僕に決断を急かすことは一切なくて、練習参加をした時も四方田修平監督から『一緒にできたら嬉しいけど、まずはよく考えて、自分のキャリアをスタートさせるクラブを自分で決めることが一番大事だよ』と1人の人間として言葉を頂きましたし、強化部の皆さんも僕の思いを尊重してくれた。それがとてつもない誠意に感じました。だからこそ、ここから僕がその思いに応えていかないといけないと思っています」

 必要としてくれたクラブへの感謝は、すでに覚悟へと変わっていた。自らの意思で選び抜いた大分で、どんな選手になり、何を成し遂げたいのか。徳永の視線は、すでにその先を見据えていた。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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