「えっ、そこから打つのか?」 王者を沈黙させた「ドラゴン」…40mの理不尽弾にファン衝撃

横浜FCでプレーした久保竜彦【写真:アフロ】
横浜FCでプレーした久保竜彦【写真:アフロ】

2007年:浦和レッズ 2-1 横浜FC

 8月7日、秋春制への移行によって新たなシーズンが開幕するJリーグ。その歴史を振り返ると、各年の「開幕戦」には数々のドラマや衝撃、あるいはハプニングが刻まれてきた。新シーズンの足音が近づくなか、ファンの記憶に強烈に焼き付いているシーンを振り返る企画「Jリーグ歴代開幕戦の衝撃」。第8回は、2007年、スタジアムの空気を一変させた「ドラゴン」久保竜彦の理不尽な超ロングシュートだ。

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 2007年3月3日、埼玉スタジアム。前年に圧倒的な強さでJ2を制し、クラブ史上初のJ1昇格を果たした横浜FCが、記念すべき開幕戦で挑んだのは、前年のリーグ王者である浦和レッズだった。

 約5万7000人という大観衆で真っ赤に染まった完全アウェーのスタジアム。昇格組にとってこれ以上ないほど過酷なシチュエーションでの初陣となったが、0-1とビハインドで迎えた前半44分、誰もが予想しなかった形で追い付く。

 敵陣のハーフウェラインを少し越えた位置。ゴールまではまだ40メートル以上ある距離でボールを受けた横浜FCの元日本代表FW久保竜彦は、相手DFのプレスが甘いと見るや否や、躊躇なく左足を振り抜いた。

「えっ、そこから打つのか?」――。スタジアムの誰もが意表を突かれた次の瞬間、放たれたボールは恐ろしいスピードで空気を切り裂いた。

 鋭く落ちるドライブ回転の軌道を描いたシュートは、少し前に出ていた浦和GK山岸範宏の頭上を越え、必死に伸ばした手も届かず、クロスバーの下をかすめながらゴールネットに突き刺さった。

 静まり返る浦和サポーターを尻目に“ひょっとこ顔”でおどけた久保。絶対王者から奪ったこの度肝を抜く一撃に、スタジアムは大きなどよめきに包まれた。

 試合自体は、地力に勝る浦和が終了間際に決勝点を奪い、横浜FCは惜しくも1-2で敗れ、歴史的な大金星を逃すことになった。

 しかし、この試合の勝敗の記憶以上に、多くのファンの脳裏に強く刻み込まれているのは間違いなくあの同点ゴールだ。予測不能なタイミング、規格外のパワー、そしてそれを実現してしまう圧倒的な身体能力。

 日本人離れしたスケール感でファンに愛された「ドラゴン」久保。あの日放ったスーパーロングシュートは、相手の戦術やセオリーを一撃で無力化する「理不尽なゴール」として、Jリーグの開幕戦史に燦然と輝いている。

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