W杯敗退のフランスに見る「ケセラセラ」の精神 逆転勝利ゼロの脆さは「国民性を映す鏡」なのか

準決勝スペイン戦で敗北したフランス代表【写真:ロイター】
準決勝スペイン戦で敗北したフランス代表【写真:ロイター】

準決勝でスペインに完敗したフランス

 圧倒的な強さで勝ち進んできたフランスが、準決勝であっさりと散った。徹底してポゼッションにこだわるスペイン相手に攻め手がなく、エースFWキリアン・エンバペも沈黙。個の圧倒的な輝きは、相手の守備組織を最後まで崩せなかった。

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 チャンスはあったが、決めきれず。疲れなのか、集中力が切れたのか、パスやシュートのミスも少なくなかった。スペインが強かったのはもちろんだが、フランスが自滅した感もあった。「フランスらしくない」という声もあったけれど、実は「フランスらしい」負けだったのではとも思う。

 いい時は素晴らしいサッカーをするけれど、少しペースが乱れると意外なほど脆いのがフランス。イケイケの時はおもしろいようにパスがつながり、シュートも決まる。気持ちよくプレーしているのが分かるし、見ていても気持ちよくなる。

 ところが、劣勢に回ると弱い。メンタルが切れるのか、諦めが早いのか、淡白なプレー、雑なプレーが増えるように思う。もちろん、選手たちは勝利に向かって頑張っているのは分かるが、何となくプレーに気持ちが入っていないように見える。この日も特に2点目を奪われてからはそう感じた。

 リードしている時はいいが、リードされるとからきし弱い。それがフランス「らしさ」かもしれない。W杯でみると、前半リードを許した試合は前回大会まで12あるが、逆転勝利は0。前回大会決勝でアルゼンチン相手に初めて追いついたが、結局PK戦負け。この日もこれまでと同じように負けた。

 決して勝負強くないスペインでも、前半リードされた11試合のうち3回は逆転勝ちし、2回は引き分けに持ち込んでいる。屈指の勝負強さを誇る(誇った?)ドイツは西ドイツ時代を含めて18試合のうち5回逆転勝ち、4回引き分け。負けたのは半分の9試合だけ。データ的にも、差は明らかだ。

「ケセラセラ」の国民性なのかもしれない。「なるようになるさ」と訳されるが、本来の意味は投げやりなネガティブなものではなく、置かれた状況を受け入れるポジティブなものらしい。とすると、この日はスペインの強さを受け入れ、早々と負けを認めてしまったのか。そう考えると、試合後に選手は淡々と敗戦を受け入れていたようにもみえる。

 サポーターも、派手に感情を出さずに敗戦を受け入れているようにみえる。お家芸の内紛にも慣れっこだ。かつて、フランスの知人は「フランスには芸術も食事もある。負けたって、別に悲しまない。サッカーしかない国とは違うから」と話していた。エンバペが登場する前のことだから今は事情が違うかもしれないが、国民性はそう変わらないはずだ。

 各国選手はプレミアリーグなどの強豪クラブに集まり、1つのチームを作る。世界中のトップ選手が継続的に練習するのだから、代表よりもクラブの方が強いと考えるのが普通。それでもW杯がおもしろいのは、国の「色」が出るから。「代表チームは国民性を映す鏡」という言葉もあるほどだ。

 自国以外でプレーする選手が増えても、100年以上の伝統に培われた代表のスタイルは簡単には変わらない。各クラブで活躍する選手たちも、代表に戻ればそのスタイルに合わせる。代表の選手になり、代表「らしい」サッカーをする。

 スマートに勝つことにこだわり、泥臭く勝利にしがみつくようなことはしない(ように見える)。勝つこともあれば、負けることもある。だから「ケセラセラ」。最後を飾れなかったデシャン監督には同情するけれど、そんな「フランスらしさ」が見られるのも、W杯の魅力だ。

(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)



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荻島弘一

おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。

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