日本が直面した“真の強豪”への壁 4年前から進化も…北中米W杯で実感した課題「足りていない」

「強豪」への長い過程における「基準」
日本代表はブラジル代表に敗れて北中米ワールドカップ(W杯)ラウンド32で敗退。前回がベスト16、今回はベスト32なので順位としては後退しているが、ノックアウトステージが16チームなのか32チームなのかの違いであって、グループステージを突破してノックアウトステージの最初の試合で敗退というところは変わっていない。
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前回はグループステージでドイツ、スペインに勝利し、ラウンド16のクロアチア戦も引き分け(PK負け)だった。今回、勝利したのはチュニジア戦だけ。オランダ、スウェーデンに引き分け、ブラジルに負けている。
しかし、今回の方が優れたチームだったと思う。
2022年は守勢に追い込まれながらドイツ、スペインに勝利したが、とくにスペイン戦は一方的にボールを支配されていた。奇襲的な2ゴールで逆転できたが、負ける可能性の方がずっと高い試合内容だ。ほぼブロック守備で守り倒している。
2026年はブロック守備からハイプレスに移行できるようになっていた。ボールを持たれて耐えるだけでなく、奪いに行く守備の精度が良くなった。ブラジル戦でも日本のハイプレスが作動した時、ブラジルは満足なビルドアップができていない。
今大会、ブロック守備からハイプレスへのスムーズな移行ができるチームは少なく、これに関して日本はトップクラスだった。
前回大会のコスタリカ戦で露呈していた、引いて守る相手を崩せない課題も改善されている。絶対的なスターアタッカーのいない日本はフィニッシュへのアプローチを分散させ、結果的にフィニッシャーも分散している。鎌田大地と上田綺世が2得点、中村敬斗、伊東純也、前田大然、佐野海舟が1得点。得点パターンはそれぞれ違っている。
ウイングバックに「ウイング」を起用する大胆な方策が軌道に乗ったのが大きい。攻め込み時の5トップ化によって、多彩なチャンスメークが実現した。相手にわかり切っていても止められないレベルのアタッカーがいない日本にとって、フィニッシュの分散化は重要だったと思う。
日本は4年前から進化し、「強豪にも勝てるチーム」として強化された。
ただ、「強豪にも勝てる」と「強豪」そのものには大きな差がある。強豪にも勝てるのだから、すべて倒せば理論上はW杯優勝も可能だ。しかし、このチーム設計で優勝するとしたらほぼ「まぐれ」である。
本気で優勝を目指すなら、今後は強豪そのものになることが目標になるわけだが、そこに至るにはかなりの年月が必要になると予想される。
1998年、開催国として初優勝したフランスはその時点ではまだ強豪未満だった。実力も条件もあったが、まだほんの少し足りていない。2018年に二度目の優勝を成し遂げた時は真の強豪になっていた。W杯で優勝してから20年かかっている。
2010年に初優勝したスペインはその点別格で、すでに他を圧倒する優位性を示していたので優勝のお墨付きも得て強豪の仲間入り。スペインのように世界を変えるくらいのイノベーションを起こせば別だが、ノックアウトステージに勝ったこともない日本が強豪に到達する過程は相当に長い道のりと考えられる。
サッカーがナンバーワンスポーツとしての地位を確立し、世界的なスーパースターを輩出するなど、いくつかの条件を満たす必要がある。その間は「強豪にも勝てる」現在のスタイルを維持しての戦いが続くわけだ。その基準を示せたので、今大会の意義はけっこう大きかったのではないか。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。


















